2017 Fiscal Year Research-status Report
Assessement on Internationl Development Activities on Museums Overseas
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17K17759
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
原田 怜 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (40573001)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エジプト / 国際協力 / 博物館 / 文化遺産 / マネジメント / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、文化遺産国際協力の中でも、特に昨今、世界各地で増加している日本による博物館援助事業に焦点を当て、文化遺産マネジメントの立場から博物館援助事業の効果的な計画と運営方法について提案することを目的とする。昨今、開発援助機関による世界各地における博物館建設を含む文化遺産を活用した開発協力が増加している。しかし、開発援助機関が行う画一的な事業評価が原因となり、事業が適切に実施されていないという問題が起きていることが発端である。 本研究では、関係者への聞き取り調査などを通して、これまでの事業の評価方法を検証し、適切な博物館援助事業を行うための指針の確立を目指す。2017度は、通年を通して、開発援助事業における事業評価手法の検証、エジプトの文化遺産保護制度、歴史、運用状況調査、利害関係者の文化遺産の価値調査と分析に取り組んだ。その結果、開発援助事業における事業評価手法の検証に関しては、当初の予定よりも進んだため、新旧手法を事例に適用して比較を試みている。エジプトの文化遺産保護制度、歴史、運用状況調査に関しては、その成果の一部を、2017年10月に文化遺産保護法に関するワークショップを開催して発表した他、2017年10月の日本オリエント学会第59回大会において発表した。評価手法の検証と利害関係者の文化遺産の価値調査のため、2018年2月に研究協力者とともにエジプトにおいて現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に計画していた内容は、開発援助事業における事業評価手法の検証、エジプトの文化遺産保護制度、歴史、運用状況調査、利害関係者の文化遺産の価値調査と分析の三項目である。 第一に、開発援助事業における事業評価の手法に関しては、研修やワークショップに参加した他、研究協力者と合同で検証を行い、手法の確立・発展の経緯について把握し、現在の課題を抽出することができた。研究が予定よりも進んだため、先行事例の比較ではなく、新旧手法の適用からの比較を試みることにした。2018年2月のエジプト現地調査において、ある文化遺産保護事業を一例に、試験的に新旧評価を行い、比較を試みた。第二に、エジプトの文化遺産保護の制度と歴史、及び、その運用状況に関しては、文化遺産保護法の文献収集や法律の原文の入手を行い、その理解を深めた。また文化遺産保護法の研究手法の検討のため、2017年10月16日にワークショップ「文化財保護法・保護制度研究への様々なアプローチ」を開催し、文化遺産保護法分析を専門とする研究者4名とともに発表を行い、意見を交換した。また、調査の成果の一部を2017年10月29日の日本オリエント学会第59回大会において「ヒストリックカイロにみるエジプトの文化遺産保護制度の課題」としてまとめ発表した。第三の利害関係者の文化遺産の価値調査と分析に関しては、利害集団のうち一部に対して試験的に行い、今年度の目標である効果的なインタビュー方法については、社会調査の専門家に研究協力仰ぎ、助言を得ながら、適切な方法に関して候補を絞った。計画よりも進んだ点としては、最終的な目的である新しい評価方法と基準のための試みとして、異なる手法の導入に関して立場の違う3 つの利害集団、JICA(支援側)、エジプト政府、事業関連スタッフそれぞれのヒアリングを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は計画通り、エジプトにおいて利害関係者の文化遺産の価値調査と分析を行う他、 2018年2月のエジプト現地調査において試験的に行った、エジプトの文化遺産保護事業における一般的に援助事業で利用される評価と新規の評価方法の適用の比較に関する分析を行う。また、別の事例にも当てはめ、検証を重ねる予定である。文化遺産保護法に関しては、動産文化財の取り扱いを中心に引き続き調査を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
計画では、初年度に、カメラ等備備品とパソコン等の消耗品の購入費を計上した。しかし、所属先において学外を含む大規模なオフィスの引っ越しが計画されており、機器の煩雑な取り扱いを懸念し、引っ越し完了後に購入する予定だったが、引っ越しが延期を重ねた結果、購入ができなかった。引っ越し完了次第購入する予定である。
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