2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of polymerization mechanism of ion channels and its physiological significance
Project/Area Number |
17K17768
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
炭竈 享司 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (30579412)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子動力学 / シミュレーション / タンパク質 / 膜 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内で合成されたイオンチャネルが細胞膜中にどのように侵入し、どのようにチャネル構造を形成して機能を発揮するかを解明することを目的とするものである。これを分子レベルから解明するために分子動力学シミュレーションを用いた研究を続けているが、分子動力学シミュレーションの結果は用いるポテンシャル(モデル)に依存する欠点がある。つまり、チャネル等のタンパク質、脂質、またイオンとの相互作用のバランスが良くなければ実験を再現し得ない。 昨年度の研究で明らかになった問題は、電気生理学的実験とは異なり、イオンがチャネル(最も単純なチャネルの一つであるpolytheonamide B; pTB)を透過しないことであった。つまり、モデルが良くないことが分かった。本年度はこれを克服することを試みた。 近年の他グループの研究により、従来のモデルでの電荷の値が大き過ぎることが分かりつつあり、本年度の研究では電荷をスケールダウンしたモデルのでシミュレーションを行った。その結果、実験で観測されるようにイオンがpTBを透過するようになった。 また、実験をより良く再現しているのかを確認するため、原子間力顕微鏡(atomic force microscope; AFM)による観察との比較も試みた。AFMでの観測系はヘビ毒PLA2が細胞膜を消化している構造であった。そこで、AFMでの観測と同じ系を作成し、電荷をスケールダウンした新たなモデルを用いてシミュレートした。その結果、AFMで観測されているPLA2-膜の結合構造に酷似した構造を得ることに成功した。 前述のように、より良いモデルは分子動力学シミュレーションに不可欠であるが、本研究では2つの例において電荷をスケールダウンしたモデルがより良く実験を再現することを確認した。これは当初の目的とは異なるが、それを達成するために必須の基礎的知見となった。
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