2018 Fiscal Year Research-status Report
主権者教育の担い手のコラボレーションを促す実践研究
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17K17771
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
後藤 賢次郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10634579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 主権者教育の担い手 / イメージマップ / ライフストーリーチャート / コラボレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の「研究の目的」と「研究実施計画」に基づき,資料収集・調査分析パートの後半部である平成30年度は,1)調査の学会発表,2)関連研究の論文化と,3)主権者教育に携わる現場教師,社会人を対象にした調査を行い,以下の成果を得た。
1)調査の学会発表については,同年11月3日,日本社会科教育学会(奈良教育大学)にて,「私たちはどのように市民育成者になっていくのか-分野・学校種・環境の異なる人々のフォーマル/インフォーマルな学びに注目して-」の題目で口頭発表を行った。この成果は,学校教育において社会科教師の特質とその存在意義を明らかにするとともに,多様な主権者教育の担い手との相互補完的なコラボレーションを築くための示唆を得られる点で,重要である。 2)関連研究の論文化については,「1990年代の日本の教科教育研究が東アジアの留学生に与えた方法論的インパクト-日本留学経験を持つ中国・韓国の社会系教科教育研究者のライフコースから-」のタイトルで,『東京学芸大学紀要 人文社会科学系Ⅱ』第70集(2019)に収録されている(共著)。本研究は,教科教育・社会科教育の研究者が置かれている状況や,求められる教育改革のあり方が国際的な次元でも変わってきており,その中で奮闘する調査対象者の姿を描き出すことができた。この成果は,主権者教育の担い手として,誰がどういった分野でイニシアティブを発揮し,誰とどう協力していくかという,本科研の研究テーマに大きく関連するもので,重要である。 3)主権者教育に携わる現場教師,社会人を対象にした調査は,「情報量豊かなケースを知っている人びとを知っている人びと」を紹介していただく「スノーボール(雪だるま式)サンプリング法」を用いて行った。その結果,昨年度の9名に加え,属性の異なる2名のデータを新たに収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3カ年に渡る本研究課題は,資料収集・調査分析パート,開発・公表・発展パートの大きく2パートを設け,推進していく。 このうち,資料収集・調査分析パートの後半部である平成30年度は,「研究の成果」でも述べたように,イメージマップとライフストーリーチャートを用いて,国内における主権者教育に携わる現場教師,市民の考え方と,その形成過程について分析・考察し,比較を行い,学会発表を行った。 また,新たに2名の調査対象者のデータを収集することができた。具体的には,研究代表者と親交のある国内の現場教師や社会人に依頼し,情報の取り扱いや任意参加の保障等について事前に説明した上で,調査と紹介に協力していただいた。なお,本人から属性の公開については承諾を得ている範囲で示すものとする。学校の魅力化を促進するNPOに所属する20代女性,大学附属中学校勤務の30代男性教諭。この2名から,音声,イメージマップ,ライフストーリーチャートをデータとして取得した。 ただし,上記の学会発表の成果は,未だ論文化できていない。調査対象者が多く,根拠となるデータを論文紙幅内に収めることが難しい点が大きな理由である。これに対して,社会科教師と他教科,学校外の主権者教育の担い手について,1)主権者教育観の共通点と違い,2)主権者教育観の形成過程の共通点と違い,3)社会科教師との共通点と違い,といったように,複数の論文でそれぞれ焦点化した視点で成果報告をすることを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本研究課題は開発・公表・発展パートへと進む。平成31年度は,平成30年度の研究の成果と課題,および研究実施計画に基づき,収集したデータの分析による「主権者教育観」とその形成要件及び形成過程の究明を中心に行い,論文化を進めつつ,研究成果を用いたイベントの企画・運営・フィードバックを中心に行う。具体的には, 1)山梨大学でのパイロット企画を計画している。2019年8月24,25日に山梨大学にて,研究代表者が所属している言語文化教育研究学会の研究集会の企画を活用する。本企画では,「つながりの向こうへ,」というタイトルで,各教育者が実践の場で抱えている課題を共有し,文化人類学,日本語教育学,教科教育学の立場から議論し合う。筆者はこの教科教育の立場で登壇する。また,研究集会参加者に対して,自身の実践やコラボレーションの希望などを申告してもらい,当日それを共有しコラボレーションを促すことを計画している。ここで得られた知見やイベントのノウハウをもとに, 2)街おこし,地域振興のビジネスプランコンテスト/ワークショップ:学生×研究者×教師×市民など属性の異なるメンバーで組織されたグループによる,私たちの街の内外の市民に向けた地域振興プランのコンテストを行う。 3)次を視点に研究成果としてまとめ,公表していく。多様な主権者教育の担い手同士の交流=社会が多様な人を巻き込みながら作られていく過程と捉えた上で,そのコラボレーションを促す場の要件を考察する。考察結果を学会発表を通して,論文化/報告書化し,公表する。 *所属が教職大学院に変わり,学部の授業を持たなくなったため,大学講義にゲストティーチャーとして講演してもらう当初の計画を変更する。
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Causes of Carryover |
調査依頼者1名(岡山県)とのスケジュール調整が年度内に叶わず,旅費請求ができなかったため,次年度使用額が生じた。 これに対し,本年度10月までに調査を行うという使用計画を立てている。現在,スケジュール調整を進めている段階である。
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