2017 Fiscal Year Research-status Report
Novel developments of terahertz-wave control by anisotropic Babinet-invertible metasurfaces
Project/Area Number |
17K17777
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中田 陽介 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (50745205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 異方的メタ表面 / バビネ反転 / テラヘルツ波 / 動的偏光制御 / 動的波長板 / 平面カイラリティ切替 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属チェッカーボード構造は接点の接続状態により、その電磁応答を劇的に変化させるという、特異な性質を持っている。本研究では、こうしたチェッカーボード構造の特異性を使った動的変調デバイスの実現に関し研究を行っている。特に、異方性のあるチェッカーボード構造の接点状態を切り替えることにより、動的にテラヘルツ波の偏光や伝搬の制御を可能にすることを目指している。本年度は、異方的チェッカーボードの特異性を応用し、偏光応答を切り替え可能なメタ表面に関して研究した。具体的には、(1) 動的に速軸を90度回転可能な四分の一波長板、および、(2) 平面カイラリティを切り替えられる構造体、を実現するために構造最適化と評価装置の改良をおこなった。(1)で開発中の動的四分の一波長板に関しては、特定の偏光のテラヘルツ波を入射している状況で、チェッカーボード構造の相転移を引き起こすと、出射波の円偏光のヘリシティ(右回り、左回り)を逆転させることができる。(2)に関しては、これまでに報告がないような人工平面材料のカイラリティ切替えが実現できる。これらのデバイスに対し、透過波の偏光を解析できるテラヘルツ時間領域分光法を用いて評価を進めている。得られた結果についてデータ解析、および、論文執筆作業を行っている段階である。このような研究はテラヘルツ波の動的偏光制御技術として広く活用可能なものである。偏光敏感分光、ロックイン技術を活用した高感度測定、データ伝送などへの応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、動的に速軸を90度回転可能なテラヘルツ四分の一波長板の開発を進めた。本デバイスには二酸化バナジウムの相転移が利用される。当初、本デバイスに必要な大きさの導電率変化を実現する二酸化バナジウムの成膜ができなかったため、作製したデバイスで十分な特性を得ることができなかった。この問題を解決するため二酸化バナジウムの成膜法を最適化し、十分大きな導電率変化を引き起こすことができる二酸化バナジウムを成膜できるようになった。この結果、新しく作製したデバイスにおいて、予想していたものに比べても大きな変調幅でヘリシティの切替が実現できることがわかった。
また、異方的バビネ反転の応用として、新たに平面カイラル応答の切替を目指し研究を進めた。その結果、平面カイラル応答の切替は比較的に実現しやすいことが判明した。このため、予定を変更し、平面カイラル切替の実現に向けた実験に注力した。この結果、実際に平面カイラル切替が可能であることを示唆する実験結果を得た。しかしながら、初期の実験では十分に温度が安定化されておらず、実験の再現性に課題があった。この問題を解決するため、温度安定化を進め、再現性よくデバイスの特性を評価できるようになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は初年度に作製した動的四分の一波長板と平面カイラル切替を実現するデバイスの評価を進め、その結果を論文にまとめ海外の学術論文誌に出版する。このために、共著者と緊密に連絡を取りながら結果をまとめる予定である。さらに、研究を深めるため、回折波制御を含めた新たな展開を模索する。これまでの異方性バビネ反転の研究では入射波と同じ波数を持つ透過波を対象にその状態制御を検討してきたが、構造と波数のやり取りをした波に対する制御可能性について研究する。具体的には,回折が生じる周波数以上で、ビームの伝搬の切替ができるかを調べてゆく。方法としては有限要素法によるシミュレーションを行い、こうした機能が実現できるかを調べる。さらに、構造のパラメータを色々と変えながら最適な構造を探す。実験の具体的なセットアップについても検討する。
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Causes of Carryover |
実績報告の項でも述べたように前年度で平面カイラルの実験に大きな成果が得られたため、予算の使用計画を変更し、次年度以降での予算使用に変更した。今後、次年度使用分もあわせて適切に実験装置等を購入し、研究を進めていく予定である。
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