2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Historical Study of Art Education in Shinshu: The Formation and Spread of Art Educationnal Ideas through Voluntary Teacher Training
Project/Area Number |
17K17780
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大島 賢一 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (90645615)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 美術教員研修 / 長野県 / 白樺派教員 / 石井鶴三 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度までの研究成果の整理及び追加調査を行なった。 ここまで、戦前の長野県の美術教員研修について、時代ごとの性質の違い、それをになった人物たちの相関関係の把握を行なった上で、、具体的な対象として、石井鶴三を講師として実施された、伊那地区及び長野地区の彫塑・絵画研究会の実施に関わる顛末や参加者等の整理、1915年に長野県師範学校附属小学校にて開催された聯合教科研究会の図画手工部門について、その位置付けとそこでの議論についての分析を行なった。 これらの研究によって、長野県における美術教師による教員研修は、当初、中央からの講師や師範学校教員を招いた、いわば上からの形ではじまったものが、大正前期ごろには制度的、人的な資源が整うことによって、各地域毎に自律的になされるものとなっていったことがわかった。そうした研修は、美術教育の方法論や教材開発に向かうというよりも、芸術修養の場として、絵画や彫刻について実習を通して学ぶものとして実施されたことがわかった。また、そうした教員研修の組織に際しては、明治期から哲学やキリスト教の勉強会などを行なっていた先進的教員たちが、校長や県教育会の管理的立場として後見をなすという構造があることがわかった。 これらの研究成果によって長野県における戦前の美術教員研修のあらましを把握することができた。本研究は、あくまで一地方における事例研究であるが、これまで十分に把握されていなかった、当該地方の美術教員研修について明らかにするとともに、戦前の美術教員の研修が、どのような目的、意図、担い手によって実施されたかということを示す点において、戦前の美術教員養成のあり方についての検討を行う視座を提供するものであるといえる。
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