2017 Fiscal Year Research-status Report
植物栽培培地内可視化のための小型かつ高性能な水分量・イオン濃度センサ研究開発
Project/Area Number |
17K17785
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
二川 雅登 静岡大学, 工学部, 准教授 (90607871)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 水分量センサ / イオン濃度センサ / インピーダンス計測 / リーク電流低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
微弱な電流の検知が必要な低い水分量の土壌で計測できる高感度検出型土中水分量・イオン濃度センサの実現を目指している。初年度となる平成29年度は微弱電流検出が可能な保護電極付きセンサデバイス及びとその駆動回路の設計・製作を成功させることができ、その成果は、センサ関連で評価の高い学術論文誌、及び国際会議に投稿し、採択を受けることができた。 これまでのセンサはチップ内部のリーク電流が検出部に流入し微弱信号電流の検出を困難にしていた。そこで、リーク電流が混入する電極部に保護電極を配置した新たなセンサ構造を提案しデバイス製作を行った。また保護電極を活用し安定して電流-電圧変換ができるよう、センサ駆動回路の設計・製作も行った。特にセンサ駆動回路の製作においては電流検出回路と保護電極とを0Vの一定電圧に固定させ交流信号成分としては絶縁分離となるような回路構成とする必要があった。そこでオペアンプの仮想接地特性を活用し、受信部-保護電極間の電圧を0 V に保つように制御しつつ交流信号成分として絶縁分離を実現させる回路を設計した。電流-電圧変換効率と仮想接地特性とはトレードオフの関係があることが分かったため、電流検出回路部を多段増幅回路にし、仮想接地特性を維持しつつ高い電流-電圧変換効率を達成させることができた。開発したセンサデバイス及び駆動回路を使い低水分量のモデル土壌を用いた実験において、従来のセンサでは水分量20%までしか計測できなかったものが、4%までの計測に成功し、農業・防災分野での活用に十分な性能であることを立証できた。本成果に対し特許1件、学術論文誌1編、国際会議1件の発表を行った。 また、外乱ノイズの大きな農業現場での計測に向け、信号の揺らぎに強い|Z|周波数微分-位相変換法を新たに提案し、その理論的な証明と実測での効果検証を成功した。現在、特許出願準備及び論文執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度となる平成29年度は、研究計画通りに進捗している。 微弱電流検出が可能な保護電極付きセンサデバイス及びとその駆動回路の設計・製作を成功させることができ、その成果は、センサ関連で評価の高い学術論文誌、及び国際会議に投稿し、採択を受けることができた。開発したセンサデバイス及び駆動回路を使い低水分量のモデル土壌を用いた実験において、従来のセンサでは水分量20%までしか計測できなかったものが、4%までの計測に成功し、農業・防災分野での活用に十分な性能であることを立証できた。 また、外乱ノイズの大きな農業現場での計測に向け、信号の揺らぎに強い|Z|周波数微分-位相変換法を新たに提案し、その理論的な証明を行った。電流と電圧との時間的なズレを示す位相が0°から-90°までの範囲において|Z|の周波数に対する変化量が、土壌の水分量やイオン濃度、培地の種類を変えても同一曲線上にプロットされることが立証でき、想定通りの研究成果を挙げることができた。現在、特許出願準備及び論文執筆中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は予定どおり進捗しており、今後の研究方針に変更はない。 基礎的なセンサデバイス、駆動回路、算出アルゴリズムの確立ができているため、平成30年度には、これらを統合した、現場計測可能な乾電池式センサシステムの完成を目指す。過去の研究成果として、単一周波数による水分量計測のシステムを開発しているため、このシステムを元にし、開発を進めていく。2種類の周波数を出力する駆動回路に変更する必要があり、システムに搭載している周波数フィルタの再設計を行う。製作したシステムを用い、計測レンジ、計測限界、計測分解能などの性能評価を行い、新システムの効果確認を行っていく。 最終年度となる平成31年度では、精密農業で用いられる少量培地を対象とし、直接・連続計測を実施する。センサから得られたデータの妥当性検証のため、少量培地の重量を定期的に観測し、水分量の変動を計測していく。また、培地内液体をスポイトを用いて採取し市販の養分濃度センサで計測を行うことにより比較データを取得する。本研究成果が、市販のセンサではできなかった、少量培地内環境の精密制御を可能とするツールであることを立証していく。
|
Causes of Carryover |
当初、センサチップの劣化を考慮し、センサチップ実装試作を2回実施する予定であった。しかし、センサチップの劣化が少なかったため1回の実施のみで実験をすすめることができたため、この経費を次年度のセンサシステム製作費に充てる計画とする。
|