2017 Fiscal Year Research-status Report
Actomyosin-based control of tissue morphology
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17K17799
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
進藤 麻子 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60512118)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 創傷修復 / 細胞骨格 / 胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチンとⅡ型ミオシンの複合体であるアクトミオシンは、多様な組織形態制御の共通した細胞移動の駆動力として活用されている。本研究ではアクトミオシンにより駆動される胚表皮の創傷修復過程に着目し、創傷修復過程特有の迅速な細胞動態を可能にするアクトミオシンの制御機序の解明を目指している。初年度は、細胞骨格因子を標的とする阻害剤の創傷修復過程への影響を検証し、創傷修復におけるアクトミオシンの機能をより高い時間分解能で解析した。さらに、迅速な創傷修復を担う細胞運動に対する微小管及びセプチンの役割をin vivo組織における細胞骨格動態のライブイメージングに適しているアフリカツメガエル胚を用いて検証した。 阻害剤の投与実験から、アクトミオシンの収縮活性は創傷面積の経時的変化に関与することがわかった。胚組織の創傷は受傷後約2分間で一過性の拡大を示し、その後約10分から15分で急速な縮小を示す。アクトミオシンの収縮活性は急速縮小期の開始時期を制御することがわかり、今後の検証課題となっている。 迅速な創傷閉鎖にはアクトミオシンによる創縁の収縮に加え、微小管の再配置による細胞伸長も必須であることを示した。受傷後3分より微小管動態を観察したところ、創傷の中心に向かって伸長する細胞の細胞膜直下に微小管束が形成されることを見出した。また、阻害剤による検証の結果、微小管は創縁に対し垂直方向に配置する細胞膜の伸長に必要であることがわかった。また、細胞骨格因子セプチンが微小管束の形成及び細胞の伸長に必要であることを見出した。興味深いことに、セプチンはアクトミオシンの創縁への蓄積には必要ないものの、アクトミオシンと機能的に相互作用し創縁を収縮させていることがわかった。これらから、胚組織の創傷修復過程において、受傷をきっかけとして複数の細胞骨格因子が機能的に相互作用し、迅速な細胞動態を可能にしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度の成果の一部は、現在論文として投稿し、査読中である。これまで、胚組織の創傷はアクトミオシンが主に機能を発揮し修復されると考えられていたが、本研究により、機能未知であった微小管及びセプチンといった他の細胞骨格因子の重要性が示された。特に、受傷をきっかけとして開始する細胞伸長特異的に微小管が必要であることなど、各細胞骨格が制御する細胞動態を同定できたことは大きな成果である。さらに、複数の細胞骨格が数分の間に機能的な相互作用を開始し、迅速な細胞動態を可能にしている点も興味深い発見である。初年度の目標としていた、迅速な創傷修復を可能にする細胞骨格動態を明らかにしたこと、さらに今後の研究発展に重要な結果も得られたことから、初年度の進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、創傷修復を担う細胞骨格動態を開始させる分子機構の探索を行う。創傷修復過程では、損傷を受けた細胞からのダメージシグナルが細胞動態の変化を引き起こすきっかけと考えられている。今後、ダメージシグナルの候補として、損傷細胞からのATPやイオンに着目する。これまでのところ、培養液のイオン濃度依存的に創傷修復速度が変化することがわかっているが、関与するイオンチャネルは多くが不明である。また、損傷細胞由来のATPが拡散することにより、細胞内カルシウムの一過的上昇が誘引されることが示唆されているが、その制御機序も不明な点が多い。これまでの研究で確立したカルシウムイメージング法を用い、上述のダメージシグナルの細胞骨格動態に対する役割を探索する。また、損傷細胞の喪失により機能が解除される細胞接着構成分子もダメージシグナルの候補として着目し、局所における細胞接着分子の機能阻害を試み、創傷修復への影響を解析する。
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Causes of Carryover |
予定していた複数の阻害剤投与実験において、開始当初に重要と思われる阻害剤に絞って実験を行い成果が得られたことから、予定していた阻害剤及び機器の購入時期を先延ばしにした。今後は、得られた成果を元に行う実験・解析と並行し、初年度に実施対象としなかった阻害剤を使用し、実験を遂行する。
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Research Products
(3 results)