2018 Fiscal Year Research-status Report
動的速度論的分割を基盤とする新規不斉クロスカップリング反応の開拓
Project/Area Number |
17K17805
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
南保 正和 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任講師 (10705528)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉クロスカップリング反応 / 動的速度論的光学分割 / 炭素-スルホニル結合活性化 / スルホン / パラジウム触媒 / 銅触媒 / 金属-カルベン / フッ素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
安価で容易に調製できるラセミ体を原料として有用な光学活性化合物を得る手法として動的速度論的光学分割が注目を集めている。しかしながらラセミ化する基質にしか適用できないため、実施できる反応様式や得られる光学活性化合物の種類に大きな制約を受けてしまうジレンマを抱えているのが現状である。そこで本研究ではスルホンのラセミ化と多様な分子変換を可能とする不斉クロスカップリング反応を同時に促進する触媒反応を開発することによって、新規動的速度論的不斉変換法の開拓を目指した。本年度は前年度に見出した不斉アリール化反応以外の新しい形式の反応を開発すべく研究を行なった。その結果、銅触媒を用いたベンズヒドリルスルホン類のアミノ化反応を見出した。この反応は安価な塩化銅が最も効果的であり、様々な1級、2級、アニリン類にも適用できるなど幅広い基質適用範囲を示した。コントロール実験から銅触媒がスルホンの炭素-スルホニル結合を直接切断して銅-ベンズヒドリル種が生じるのではなく、銅-カルベン種の形成を強く示唆する結果を得た。本反応は逐次的なアミノ化にも有効であった。ベンズヒドリルハロゲン部位が共存したスルホンを用いることで逐次的なアミノ化が可能であり、非対称ジアミン化合物を高収率で得ることに成功した。また分子内反応に適用したところ環状アミン類をそれぞれ良好な収率で得ることができた。またパラジウム触媒を用いることでa位がフッ素化されたベンジルスルホン類のアリール化が進行し、a位がフッ素化されたジアリールメタン類を得ることに成功した。これらの研究成果は本研究の目標達成に向けた重要な知見であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定していない新反応をいくつか開発することに成功した。しかし、不斉反応への展開を次年度も継続して検討する必要があると考えており、達成度は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した反応を不斉反応への応用を目指す。まず立体的な非対称な置換基を有する基質を用いて市販の様々な不斉配位子を用いて不斉反応の検討を行う。不斉誘導が確認できた場合、不斉配位子の構造の分子設計、合成によって反応性、不斉収率の向上を検討する。さらに量子化学計算を用いた反応メカニズム解析も行い、不斉発現過程に関する知見を得る。反応を最適化した後、基質の適用範囲を調査する。さらに開発した反応を用いて生物活性化合物の合成に応用することで本反応の有用性を実証する。
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