2020 Fiscal Year Research-status Report
Female physicians: exploring the effectiveness of career support initiatives and future challenges
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17K17819
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Research Institution | Toba National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
深見 佳代 鳥羽商船高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (90793498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 労働環境 / 医療・福祉 / ジェンダー / キャリア / 男女共同参画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成19年度、文部科学省が女性医師支援策として医療人GPを開始した。女性医師の地理的・診療科的偏在に着目してこの支援策の有効性を検証することが本研究の目的である。厚生労働省より「医師・歯科医師・薬剤師調査」の個票を取得して分析を進めている。本年度の成果は以下の4点にまとめられる。 (1)女性医師は体力的に厳しい診療科を選択しにくい傾向があると言われている。本研究では三師調査から診療科選択の動向を分析することで、性による選択の偏りが近年緩和しつつあることを明らかにした。この結果は深見による単著論文「女性医師の活躍を阻むものはなにか」『日本労働研究雑誌』(労働政策研究・研修機構、第722巻9号)によって社会に公表した 。 (2)女性医師は都市部に集中すると言われている。そこで、女性医師が選択しにくい上に地方に存在している診療科は医師不足が加速的に進むのではないかとの予想をもってこれを分析した。その結果、女性医師率の増加傾向が強い診療科であるほど、過疎地域よりも大都市地域で女性医師が伸びているという緩やかな相関が観察された。この結果は深見による単著論文「女性医師の診療科偏在と地域偏在に関する医療圏分析」『経済論叢』(京都大学経済学会、第195巻1号)として公表した 。 (3)昨年度48th World Congress of Surgeryで医学部入試における女性差別問題を報告した。より詳細な分析を行った上、現在国際学術誌に投稿中である 。 (4)昨年度第74回日本消化器外科学会で医療人GPに採択された医育機関の女性医師の状況を報告した。より詳細な分析を行った上、現在共同執筆者として国際学術誌に投稿中である 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はこれまでの研究結果の論文化に注力したが、12月より産前休業に入ったため、事業を実施した期間は4月から11月の8カ月間であった。そのため進捗状況はやや遅れている。それぞれの論文と研究の進捗は以下4点の通りである。 (1)医療人GPの職階別効果。医療人GPに採択された医育機関とそうでない医育機関とを比較したとき、女性医師の増加傾向は職階によって異なる可能性が明らかとなった。これは医療人GPが女性医師の労働環境改善を必ずしも実現しなかったことを示唆しており、重要な政策的提言につながる。本論点については論文としてまとめ、現在国際学術誌に投稿中である。 (2)女性医師支援策の効果。上記と関連し、政府がこれまで取り組んできた女性医師支援策や、各医育機関が医療人GPとして取り組んできた支援内容を調査した。それによると支援策は女性医師の労働時間を短くするものに偏っており、こうした支援は医師の絶対数が増えていたとしても現場において医師不足を感じる可能性がある。本論点についても現在国際学術誌に投稿中である。 (3)特定の診療科の特殊性。医師は一般に都市部に偏在するが、特定の診療科では必ずしもこの傾向を持たないことが明らかになった。加えて、この診療科では産休・育休の取得率も高いことが合わせて確認されており、他の診療科と比較した特殊性をとらえることができた。 (4)医学部入試における性別合格率の特殊性。ほとんどの大学において男子合格率が女子合格率を上回る。一方で医学部を除くすべての学部において女子入学率は男子入学率を上回っており、また医師免許試験合格率も一貫して女性受験者の方が高く、医学部入試においてのみその傾向が逆転しているのは特徴的であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は育児休業中のため研究は中断しているが、来年度(2021年)の10月に復帰予定である。来年度が科研費の受領の最終年度であり、復帰後に残された期間は6カ月間であるため、事業再開後は次のように推進する予定である。 (1)女性医師支援策の批判的検討。本研究では特に医療人GPに着目して分析を行ってきたが、医療人GPの予算規模や各大学の施策の多様性を検討する中で、その効果が限定的であることが明らかになりつつある。他省庁や医育機関が取り組んできた女性医師支援についても視野を広げ、これまでの支援策について批判的な検討を行う予定である。 (2)地域的・診療科的偏在を緩和する労働形態の模索。多くの診療科は医師が都市部に集中し、かつ体力的に厳しい診療科は医師不足になりやすいという傾向がある。しかし特定の診療科においては都市部と地方とで増加率に違いがなく、くわえて産休・育休取得率も他診療科に比べて高いという特徴がある。この背景を調べることで、他診療科へのWLB実現の示唆を得るとともに、地方における医師不足に対する政策的提言を行う。 (3)事業再開後は上記2点に集中的に取り組んでいくが、これまでの研究と関連して得られた知見についても研究を進展させたいと考えている。(a)女性医師支援策では女性の労働力が男性の8割程度であるとの結果がしばしば引用されているが、この根拠について明らかにする。 (b) 三師調査を用いた分析において、医師だけでなく歯科医師や薬剤師との労働環境を比較したところ、薬剤師において特に顕著な性別職域分離があることが観察されている。こうした傾向がみられる原因について分析を進める。(c)社会に残る女性差別の発露としての入試差別問題を受け、男子受験生の合格率が総じて高い傾向にある理由について考察を深める。
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Causes of Carryover |
当初の予算計画では旅費を主として見積もっていたが、コロナのため国内外の出張は全てキャンセルとなった。また、出産にともなって産休に入ったことで事業の実施期間そのものが短くなり、次年度使用額が生じた。事業の最終年度として研究結果の論文化に取り組んでいるため、英文校正費や投稿費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)