2017 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌由来スルフォグリコシダーゼと硫酸化ムチンの共生における機能解明と応用研究
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17K17820
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 紀彦 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40724612)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スルフォグリコシダーゼ / ビフィズス菌 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum由来スルフォグリコシダーゼBbhIIの腸内環境下での生理的機能について、酵素の生化学的解析と応用研究、またはマウスを用いたin vivoの機能解析を通して明らかにすることを目的とした。 H29年度以前に、BbhIIは化学発色団を用いた解析からN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)遊離活性よりも強い6-硫酸化N-アセチルグルコサミン(GlcNAc-6S)遊離活性を示すことが明らかとなっていた。そこで、引き続いて天然基質に対する酵素活性について検証するため、BbhII大腸菌組換え酵素と粘膜主成分であるムチンタンパク質とをインキュベートし、その溶液についてTLCおよびHPLC分析を行った。その結果、本酵素がGlcNAc-6Sを遊離することを明らかにした。さらにB. bifidum菌体とムチンを混和することによってもGlcNAc-6Sの遊離が認められ、天然型BbhIIもムチンに作用可能であること、さらにBbhIIが細胞表面に局在することが示唆された。また、ムチンを炭素源とした培地で培養した菌体では、グルコース培地で培養した菌体に比べ、bbhIIの発現量が2倍程度増加しており、他のムチン分解系遺伝子とともにムチン存在下で発現誘導されることが定量PCRによって示された。またさらに他菌種とのクロスフィーディングの可能性を検証するため、各菌種の増殖(ゲノムコピー数)について菌種特異的プライマーを用いたPCRによって定量することで検証を行った。そうしたところ予備的ではあるものの、ムチンを含む培地においてある菌種は単培養時と比べ、B. bifidumとの共培養時に、有意に高い増殖能を示すという結果を得ることに成功し、B. bifidumの分解した糖鎖が他菌種の増殖に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、ヒト共生細菌であるビフィズス菌がヒト腸内環境というニッチにどのように適応進化してきたかという命題に関して、ビフィズス菌B. bifidumの持つ糖質分解酵素、特に新規スルフォグリコシダーゼの酵素学的機能と遺伝子発現制御を調べることを通して解明を試みてきた。H29年度では、酵素の生化学的性質のin vitro解析、結晶化条件検討、遺伝子破壊株の作製とクロスフィーディングの可能性の検証を試みた。酵素の諸性質に関してはH29年度以前に明らかにしていた内容と合わせて論文として発表した。さらにB. bifidum破壊株については予期していたとおり困難であり、条件検討の途上である。クロスフィーディングの可能性検証については予備的ではあるもののポジティブな結果を得ている。ただし、予定していたBbhIIのシンターゼ化を進めることはできなかった。以上の状況をふまえ総合的に判断すると、おおむね順調に研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度では、遺伝子破壊株の作製もしくはB. longum 105A株のBbhII発現組換え株の作製を完了させ、その菌株を使用したクロスフィーディング実験およびマウスin vivo解析を遂行する。これらの実験結果からスルフォグリコシダーゼBbhIIの共生における役割について考察を行う。またH29年度にできなかったBbhIIのシンターゼ化を行い、糖転移活性について検討し、硫酸化糖鎖の合成を試みる。
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Causes of Carryover |
当該助成金は新規スルフォグリコシダーゼ探索のための糖鎖基質受託合成費用として予定していたが、当該年度に合成が完了せず納期がH30年度となることが確定したため、繰り越すこととした。
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Research Products
(3 results)