2017 Fiscal Year Research-status Report
相関の強い非一様絶縁体のトポロジカル分類と端状態:冷却気体系から固体系への展開
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17K17822
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
手塚 真樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (40591417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジカル量子現象 / 冷却気体系 / 量子ダイナミクス / Sachdev-Ye-Kitaev模型 / 多体局在 / 準位統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却気体系で最近実現されているトポロジカル量子ポンピングに関して、連続空間を離散化しての、時間依存密度行列繰り込み群による解析を進めた。ポンピングの量子化の前提は、ポテンシャルの時間変化の周期が充分に長い、断熱的な駆動であり、この極限で量子化はある程度の粒子間相互作用に対しても安定であることが知られている。本研究では、実験での有限の時間周期でのポンピングを想定し、研究協力者とともに、1次元系で調和振動子ポテンシャルと周期1:2の光格子ポテンシャルを重ね、一方の光格子を有限の速さで動かした系を考えて、2成分フェルミオン原子系の基底状態からの時間発展を解析した。設定した状況では、原子系の重心の移動量を量子化値で割って得られる、駆動の効率は、駆動周期が短いと指数関数的に抑制される。この時定数について、系から隣り合う格子点を抜き出した二重井戸型ポテンシャルでの2粒子の束縛状態の構造から予測されるものとの比較を行い、2粒子系で説明できる範囲を明らかにした。 Sachdev-Ye-Kitaev (SYK)模型は系を構成する全てのフェルミオンの間にランダムな4点相互作用をもつ空間0次元の模型であり、代表者らによる冷却気体系での実現法の提案[I. Danshita, M. Hanada, and M. Tezuka, PTEP 2017, 083I01 (2017)]後、最近では、トポロジカル絶縁体上に形成された超伝導体に開いた穴や、グラフェンの小片などで実現する可能性も提案されている。本研究目的に関連し、このような模型で多体局在を実現する可能性を考え、SYK模型に2点相互作用を加えた系に関して、2点相互作用が長距離および隣接サイト間のみの場合ともに、番号付けされたフェルミオンについて4点相互作用の到達距離を限定すると、多体局在が起きることを、準位統計の解析により明らかにした(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トポロジカル量子ポンプで非一様性と粒子間相互作用がともにある場合の解析について、数値シミュレーションでの条件設定と解析に時間を要し、当初初年度中に予定していた、実験と比較可能な理論的予測の発表に至っていない。 一方で、SYK模型における多体局在の提案は、当初予想していなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジカル量子ポンピングに関して、これまでに得られた結果を早期にまとめ、空間的非一様性が粒子間相関と共存する場合についても、実験と比較できる結果を得て発表を進める。 なお、本研究の応募時に存在を認識できていなかった研究[A. C. Potter and R. Vasseur, Phys. Rev. B 94, 224206 (2016)] が応募後の2016年末に出版され、そこでは、多体局在のうち全ての固有状態が局在する場合については、系に対称性があると強い制限がかかることが指摘されている。これを指針とし、多体局在と輸送の関係に関しては、対称性の影響を適切に考慮し、実験的な検証が期待できる状況に限定して、今後の研究を続行する。
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Causes of Carryover |
申請当時はメモリ容量の大きなラックマウント計算機の購入を予定していたが、メモリ価格の上昇に伴い、交付内定額の範囲では購入が困難となった。また、国際会議(交通費の支給なし)に招待され、予定よりも多くの旅費が必要となった。そのため、ラックマウント計算機は購入せずに、メモリ容量の比較的大きなデスクトップPCを購入して、全国共同利用施設のスパコン等と併用することとした。 なお、次年度使用額と次年度内定額を合わせた額は、2年目の使用額として申請書に記載した額以内であり、本研究目的のために適切に使用する。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Black holes and random matrices2017
Author(s)
Jordan S. Cotler, Guy Gur-Ari, Masanori Hanada, Joseph Polchinski, Phil Saad, Stephen H. Shenker, Douglas Stanford, Alexandre Streicher, and Masaki Tezuka (in alphabetical order)
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Journal Title
Journal of High Energy Physics
Volume: 1705
Pages: 118-1-52
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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