2018 Fiscal Year Research-status Report
A Pratical Study of the Empowerment in Disaster Recovery Process
Project/Area Number |
17K17826
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
LEE FUHSING 京都大学, 防災研究所, 特定研究員 (10769938)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 震災復興 / 事前復興 / 住民主体 / 地域防災 / 当事者研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、住民主体の復興を実現するための方途を理論的かつ実践的に検討することを目的とする。本年度では、2つの取り組みが行った。 (1)東日本大震災の被災地である茨城県大洗町において、「クロスロード:大洗編」という名称の防災学習ツールを被災地住民が自ら制作することを研究代表者が支援することを中心としたアクションリサーチを通して、パターナリズム構造の悪循環を解消することを試み、浦河べてるの家が推進する「当事者研究」の視点から考察した。その結果、査読論文の李フシン・宮本匠・矢守克也(2019) 当事者研究からみる住民主体の震災復興-防災ゲーム「クロスロード:大洗編」の実践を通じて- 実験社会心理学研究 58(2) 81-94 で掲載されている。 (2)「被災地大洗町と未災地黒潮町」の交流勉強会の開催。大洗町では、震災から7年経った現在の課題は、大洗サンビーチの観光客数のさらなる回復および地域防災のソフト対策などが挙げられる。しかし、対策の実践に至っていない。その理由は、高齢化、防災人材の不足、防災意識の低下、行政と住民のコミュニケーション不足などが挙げられる。そのため、大洗町が抱える防災の課題に関しては、津波による「犠牲者ゼロ」を打ち出して数々のユニークな対策を実施に移してきた南海トラフ地震の「未災地」である高知県黒潮町の経験と知見が交流できた。研究代表者は2018年5月26日・27日に大洗町で第1回の交流勉強会を開催し、2019年1月27日・28日に黒潮町で第2回の交流勉強会を開催した。その結果、両地および研究者との交流によって、住民主体の震災復興および事前復興の課題に向けた解決策が得られた。また、両地が互いに影響しあうことで、黒潮町は、大洗町の経験を活かし、防災教育教材「クロスロード:黒潮編」を作成でき、大洗町は、サンビーチで津波避難実測訓練を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は昨年度の報告書の予定通りに進展している。 また、本研究の当初の計画では、2015年関東・東北豪雨被災地常総市石下地区で大洗町と同様のインタビュー調査および参与観察を行う予定だった。平成30年度では、茨城県大洗町と高知県黒潮町を中心にフィールド活動を行ったため、常総市石下地区で活動することは困難であった。今後は常総市石下地区の事例を参考した上で、大洗町、黒潮町、台湾を中心に研究を実行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究計画の最終年度である。そのため、これまでの研究成果を海外の英文雑誌、学会で発表する予定である。 また、今年度に実施した大洗町と黒潮町の交流勉強会は、すでに具体的な成果として表れたが、たとえば大洗町における津波避難訓練の実施、「クロスロード:黒潮編」などの取り組みをいかに継続的に実践できるのか、本交流勉強会の実施が必要であると考えられる。そのため、来年度も開催する予定である。 台湾では、台湾の震災復興の文化・歴史・政治状況そして地域住民と外部支援者の関係性を把握した上で、台湾政府行政院水土保持局の「土石流防災専員」プログラム(土石流防災の地域リーダー育成)と連携し、「クロスロード:台湾土石流編」を作成する。その中で、ゲームの作成およびプレーのプロセスを通じて、台湾における住民主体の地域復興と事前復興の特徴を把握し、日本と比較する。
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Research Products
(6 results)