2020 Fiscal Year Annual Research Report
Cognitive mechanisms underlying stress prolongation in captive chimpanzees
Project/Area Number |
17K17828
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Research Institution | Kyoto City Zoo |
Principal Investigator |
山梨 裕美 京都市動物園, 生き物・学び・研究センター, 主席研究員 (80726620)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チンパンジー / 長期的ストレス / 健康 / アロスタティックロード / スローロリス / 社会行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画はチンパンジーを主な対象として、長期的なストレスレベルに影響を与える要因と健康などへの影響を調べることである。本年度は最終年度として、主に長期的なストレスレベルが健康に与える影響について分析した。また、行動評価のための実験セッティングなどもいくつか開発し、少数の個体ではあるがこれまで評価できていなかった行動傾向についても定量的な評価を行った。得られた主な結果は下記である。 2013年~2015年の体毛中コルチゾル濃度(長期的なストレスレベルの指標)と、その後の8年間の健康診断の結果(血液やその他測定など)、死亡、ウィルスの保持などとの関連を検討した。チンパンジーをはじめとする飼育下の大型類人猿では心疾患で若くして死亡する個体がそれなりの頻度で存在する。その原因はわかっていないが、ストレスが影響していることが示唆されているが、定量的な分析は行われていない。今回対象とした個体の中にも複数が心疾患などで死亡した。しかし結果として、ストレスが死亡や心疾患の促進などの影響していたという証拠は得られなかった。チンパンジーでは社会環境が長期的なストレスレベルに影響することが昨年度までにわかっているが、それが直接的に健康を害しているということはなかった。 ただしストレスの指標として、体毛中コルチゾル濃度だけを指標とすることには問題があるとも考えられたたため、アロスタティックロードと呼ばれる人の医学分野で用いられるストレス指標を算出して同様の検討を行った。しかし関連は見られなかった。 さらに比較対象として、同じ霊長類であるピグミースローロリスを対象として社会的な要因がストレスレベルに与える影響を検討した。チンパンジーと異なり、社会的な要因が長期的にストレスレベルを高めることはなかった。こうした種差については興味深いところであり、今後の研究展開にもつながる結果が得られたと考えている。
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Research Products
(14 results)