2017 Fiscal Year Research-status Report
新たな小農アブラヤシ生産認証制度に向けた研究:利害のフィットネス・生活の持続
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17K17836
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
寺内 大左 東洋大学, 社会学部, 助教 (10728140)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アブラヤシ / インドネシア / RSPO / 持続可能性 / 小規模農家 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアでは小規模農家(小農)のアブラヤシ農園が拡大している。本研究は小農の持続的なアブラヤシ生産を実現するための国際認証制度、RSPO(持続可能なパーム油生産のための円卓会議)認証制度に関する研究である。 平成29年度の研究実施計画は、1)国際認証制度の文献を包括的にレビューする、2)RSPO認証の歴史的な展開と最新動向を把握する、3)スマトラとカリマンタンで予備調査を実施し、調査村を決定する、という計画であった。 1)については、RSPO認証制度を中心に国際認証制度に関する文献資料を収集し、読み込むことができた。文献レビューの結果、小農の認証取得の制約要因として、認証取得のため、また適切な農業実践のための知識・技術・資金の不足、記録の習慣の欠如、文書作成能力の不足、モチベーションの不足が指摘されていることが分かった。 2)については、2017年11月にマレーシア・クアラルンプール市にあるRSPO本部事務局を訪問し、インドネシアの州単位のRSPO認証アブラヤシ農園面積の統計データを入手できた。このデータから、インドネシアでRSPO認証を取得している企業が最も多い州は北スマトラ州で、続いてリアウ州、中央カリマンタン州であり、ここ数年では南スマトラ州での認証取得企業が増加していることが明らかになった。このようなRSPO認証アブラヤシ農園の時空間的展開を明らかにしたのは本研究が初めてである。 3)については、カリマンタンでは予備調査を行えなかったものの、スマトラでは2018年3月に小農RSPO認証制度を取得した小農グループにコンタクトをとり、小農グループのアブラヤシ農園生産の実態とその効果について話を伺えた。その結果、小農RSPO認証の経済的効果は、認証に理解のある企業が存在して初めて実現できるものであることが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた平成29年度の研究実施計画のうち、1)の文献レビューは予定通り実行できた。2)のRSPO認証の歴史的な展開と最新動向については統計データを入手できたので、予定通り最新動向と歴史的な展開をある程度把握できた。3)のスマトラとカリマンタンにおける予備調査では、カリマンタンで調査を行えなかったが、スマトラの小農RSPO認証を取得した小農グループの調査を行うことができた。当初は予備調査を行うことで調査地を決定し、次回調査のための質問表の作成までを目標にしていたが、予備調査で予想以上に情報収集することができた。以上の状況からおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はスマトラの小農RSPO認証を取得した小農グループに対して、グループ内の各小農の生計戦略を明らかにするために体系的な聞き取り調査を行う計画でいる。小農の生計戦略は3つの側面から明らかにしていく。一つ目は、世帯の生計活動の選択と組み合わせ方といった世帯経済面での戦略である。二つ目は、小農、協同組合、農園企業、仲買企業といったアクター集団間、もしくはアクター集団内での土地、技術、労働力、生産物、資本のやり取りに関わる社会関係面での戦略である。三つ目は、政府、NGO、国際機関などによるRSPO認証推進政策の活用といった政治面での戦略である。 さらに、小農RSPO認証を推進する利害関係者(政府、NGO、農園企業、スポンサー企業など)が、それぞれの組織運営の中に小農RSPO認証推進活動をどのように位置づけているのかも明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
年度末に研究テーマに関連する書籍を購入する予定であったが、3月に渡航していたため一部の書籍の手続きを行えず、当該助成金が生じた。
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