2017 Fiscal Year Research-status Report
Toward a cognitive pragmatics dealing with various interpretations of NPs
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17K17842
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山泉 実 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (80592336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 指示参照ファイル(reference file) / 名詞句 / コピュラ文 / 存在文 / 指示性 / ID |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、研究課題に本格的に取り組む前に、予備的考察として研究課題に関連する3つのテーマに関して論文を4本公刊した。 1.「逆隠喩」と言われる名詞句の意味の変容に関して、研究課題が前提とする関連性理論の語彙語用論の観点から従来の分析とは異なる分析を提示した。(日本語用論学会『語用論研究』第19号、『日本語用論学会 第19回大会発表論文集』第12号)。 2.「舵を取る」などの慣用的意味の成立に(メトニミーと共に)関わっているのはメタファーかシネクドキかについて意見が分かれているという問題に対して、動的使用依拠モデルの比喩のモデルである上位スキーマ化モデルに基づいてシネクドキとメタファーの関係をとらえることで答えを与えることを試み、意味拡張にどの種類の比喩が関わっているのかを検討する際に,比喩によって生じる語彙レベルの意味の違いと、研究課題の中心テーマである名詞句の文中の意味機能の違いによる文レベルの意味の違いを混同するべきでないことを主張した。(大阪大学言語文化研究科日本語・日本文化専攻『日本語・日本文化研究』第27号) 3.コピュラ文に頻出する「名詞句+は」の統語論的位置について、Role and Reference Grammarの枠組みを使って検討し、同時に主題と焦点という概念について、認知語用論の観点から検討した。(言語社会学会『EX ORIENTE』第25号)
これらを踏まえて、研究課題に本格的に取り組み出し、年度末までの成果をまとめ、「指示参照ファイルによる名詞句の意味論・語用論」と題してクローズドな研究会で初めて発表した。なお、その発表を受けて、学生有志による本理論の勉強会が既に行われているとの報告を聞いている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、当初の予定通りのエフォートを費やすことができなかったため、予備的考察を済ませて本格的に理論構築に取り組み出すまでに予定以上の時間がかかった。 しかし、3月から本格的に取り組み始めることができ、その後は順調に理論構築が進展した。 その結果、現段階で理論の大枠はでき、理論全体に関する最初の発表ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.構築した理論で以下の具体的な言語現象を分析する。それによって、理論を精緻化する:各種コピュラ文(指定文・措定文・同定文・同一性文など)、各種存在文(場所存在文・絶対存在文・帰属存在文・リスト存在文など)、高階の変項名詞句、各種変化文、潜伏疑問文、潜伏命題文、不透明な文脈、転位構文。 2.上の現象を扱っている他の理論(メンタル・スペース理論、メンタル・ファイル理論など)を精査し、参考とする。 3.ある程度理論構築が進んだ段階で口頭発表を行う。 4.口頭発表のフィードバックも参考に、論文を執筆する。 ただ、既に理論が大規模で、短時間の発表・短い論文には適さないとのコメントもいただいており、ワークショップの開催、モノグラフの執筆なども検討したい。
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Causes of Carryover |
2017年度は、予想をはるかに上回る量の校務をせざるを得ず、若干出張を控えることになったため。2018年度は校務が減ると予想され、前年度より本研究課題へのエフォートを増やし、当初の予定通りに助成金を使用する予定。
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Research Products
(7 results)