2017 Fiscal Year Research-status Report
上皮細胞の極性形成における細胞内膜融合関連分子の機能の解明
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17K17847
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
國井 政孝 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80614768)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SNAP23 / SNARE蛋白質 / 細胞極性 / 神経前駆細胞 / apical junction / N-cadherin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内において膜蛋白質や分泌蛋白質を輸送する小胞と細胞膜との融合に働くSNARE分子であるSNAP23の組織特異的遺伝子欠損マウス(KOマウス)を用いて、上皮細胞の極性形成におけるSNAP23の機能を解明することを目的としている。 神経特異的SNAP23 KOマウスでは大脳皮質や小脳の形成不全が生じることから、まず、胎生期の大脳皮質について形態学的な解析を行った。その結果、SNAP23 KOマウスでは脳室帯に存在する神経前駆細胞に形態異常が生じ、それに伴って新生ニューロンの遊走異常や細胞死が起きていることが明らかとなった。この原因を明らかにするため、神経前駆細胞の細胞間接着に注目して解析を行ったところ、SNAP23 KOマウスの神経前駆細胞では頂端側に形成される細胞間接着(apical junction)が失われていることが明らかとなった。細胞間接着形成に重要な分子であるN-cadherinとSNAP23の局在がよく一致することから、SNAP23がN-cadherinのapical junctionへの局在化に関与していることが考えられた。このことを確かめるため、マウスから単離した神経前駆細胞を用いてcell surface biotinylation assay等の解析を行ったところ、SNAP23をノックダウンした神経前駆細胞では細胞膜に局在するN-cadherinの明らかな減少が認められた。 次に、N-cadherinの細胞膜局在化においてSNAP23と共同で働くSNARE蛋白質の同定を行った。神経前駆細胞の溶解液を用いて抗SNAP23抗体による免疫沈降を行い、質量分析によって結合蛋白質の同定を行ったところ、複数のSNARE蛋白質が得られた。今後、これらのSNARE蛋白質の中で、N-cadherinの細胞膜局在化に関与する分子を決定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では上皮細胞の極性形成におけるSNAP23の機能を解明するため、組織特異的KOマウスを解析している。神経特異的KOマウスの解析はおおむね計画通りに進展し、SNAP23がN-cadherinの細胞膜局在化を通して神経前駆細胞の極性形成に関与していることを明らかにした。また、N-cadherinの細胞膜局在化においてSNAP23と複合体を形成するSNARE蛋白質の候補を同定しており、現在これらの蛋白質の機能を解析中である。siRNAによるノックダウンや、CRISPR/Cas9によるノックアウトによってN-cadherinの細胞内輸送や細胞膜への局在化がどう変化するか解析し、結果が得られ次第、論文作成に移る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はN-cadherinの細胞膜局在化においてSNAP23と複合体を形成するSNARE蛋白質の解析に重点を置く。神経前駆細胞の溶解液を用いた抗SNAP23抗体による免疫沈降および質量分析によって同定された複数のSNARE蛋白質について解析する。siRNAによるノックダウンや、CRISPR/Cas9によるノックアウトによってこれらのSNARE蛋白質を欠損した神経前駆細胞について、N-cadherinの細胞膜局在化がどう変化するか、免疫染色やcell aggregation assay、cell surface biotinylation assay等の解析によって確認する。また、N-cadherinの細胞内の動きをGFP融合N-cadherinの細胞内輸送のライブセルイメージングによって解析する。これらの解析によって神経前駆細胞のapical junction形成におけるN-cadherinの細胞膜局在化の分子機構を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
本年度の使用金額実績はほぼ予定通りであり、残額は誤差範囲内であると考える。 次年度に消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)