2018 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis and Function Developpement of Radial Pi-Clusters Composed of Anthracene Units
Project/Area Number |
17K17849
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西内 智彦 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10706774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射状πクラスター / アントラセン / 光異性化 / エキシマー発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではベンゼン環にアントラセン骨格を放射状にできるだけ密に集積した「πクラスター分子」と呼べる化合物を合成し、その機能開拓を目指し研究を展開している。これまでに新たな磁気特性や光学特性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)を得るため、様々な分子設計が提案されてきたが、その中で本研究は、既存のPAH を密集・集積化させるというコンセプトを提案している。これにより二枚以上の芳香環の間に、空間を介したπ共役系を構築させることが可能となり、PAH が一つの時よりも狭いHOMO-LUMO ギャップを有した化合物を与えることができる。これにより単分子ではみられない興味深い物性の発現が期待できると考えている。 初年度はまず四つのアントラセン骨格が密集した1,2,3,4-テトラアンスリルベンゼンの合成を目指したが、合成の鍵となる化合物(1,2,3,4-トリアンスリルベンゼン)の効率的な合成を達成することは出来なかった。一方で目的の構造異性体である1,2,4,5-テトラアンスリルベンゼンについて、申請者が開発した合成法を用いることで効率良く得ることに成功した。この化合物のアントラセン骨格の密集度は1,2,3,4置換よりも下がるが、密集度の効果を調べる上で非常に重要な化合物である。興味深いことにこの化合物の結晶構造は、隣接する分子のアントラセン骨格同士が密にπ-πおよびC-H…π相互作用をして二次元構造を形成していた。 そして最終年度には、ベンゼン環よりもさらに小さなメチル基に三つのアントラセンを集積させたトリアンスリルメチル(TAntM)ラジカルというπクラスター分子の合成に成功した。TAntMラジカルは嵩高い三つのアントラセン骨格によって非常に安定化された中性ラジカルで空気下での精製・取扱いが可能であり1000nmを超す近赤外領域にまで吸収帯を持つ興味深い性質を有していることを明らかにした。
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