2017 Fiscal Year Research-status Report
やくざ映画の分析を通した戦後日本社会における男性イメージの変化の考察
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17K17858
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
東 園子 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (40581301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 男性性 / やくざ映画 / 男同士の絆 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本社会における「男らしさ」の転換期とも評される1960~1970年代に、その暴力性や男同士の絆の描写などによって男性から人気を博した東映制作のやくざ映画において、どのような「男」のイメージが見られるか、また、それがどのように変化していったかを分析することを通して、戦後の日本社会における男性性(masculinity)と男同士の絆や暴力との関係とその変容を考察することを目的とするものである。 2017年度は、基礎的な資料の収集とともに、やくざ映画の作品分析、中でも『昭和残侠伝』と『仁義なき戦い』の分析を中心に研究を行った。やくざ映画は1970年代初頭に、一種の時代劇である「任侠路線」から実在のやくざを題材にした「実録路線」へと転換し、それに伴って登場人物像なども変化するが、『昭和残侠伝』は前者を、『仁義なき戦い』は後者を代表するシリーズといえる。そのため、詳細に作品分析を行った。その結果明らかになったこととして、『昭和残侠伝』では、主人公たちの行動原理、「男」であること、男同士の絆が、いずれもやくざ社会の掟である「義理」と結びついており、これらは齟齬なく接続している。だが、『仁義なき戦い』では、主人公たちの行動原理が「自由」や「欲望」の追求へと変化することで、それらを共有した男同士の絆が束縛にもなりうるというアンビバレントな性格を帯び、「男」であることに対するジレンマが浮上する等がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り作品分析を実施しており、研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度から継続してやくざ映画の作品分析を行う計画である。本年度の『昭和残侠伝』と『仁義なき戦い』の分析から得られた知見が他のやくざ映画にもあてはまるか等について検討する。また、引き続き、関連資料の収集にも努める予定である。
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Causes of Carryover |
当初、やくざ映画の映像資料は本年度に一括して収集することを考えていたが、分析の進捗にあわせて適宜入手するよう方針を変えたため、次年度への繰り越しが生じた。今年度入手しなかった資料は、次年度以降に収集する予定である。
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Research Products
(1 results)