2017 Fiscal Year Research-status Report
イメージング質量分析を用いた魚類に取り込まれたセシウムの動態に関する研究
Project/Area Number |
17K17861
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 順 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90452424)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イメージング質量分析 / 元素分布測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
小型海水魚を多数匹・長期間飼育可能な海水水槽設備を構築して、実験の測定試料となるオヨギイソハゼの飼育を行った。飼育水中のセシウムとストロンチウムの濃度を45日かけて上げていき、セシウムは5.6×10^-4 mol/L、ストロンチウムは8.4×10^-5 mol/Lまで上昇させた。この飼育水の状態で2週間飼育し、その後、部分的換水を繰り返すことでセシウム・ストロンチウム濃度を下げていった。換水に大量の人工海水が必要なため、当初の想定より濃度の減少速度が緩やかになった。この飼育期間中に1週間に1匹の頻度でオヨギイソハゼを捕獲し、液体窒素を用いて過冷却したn-ヘキサンに含浸させて凍結試料を作成し、-80℃のディープフリーザーで順次保管した。 セシウム濃度が最大となっている期間に捕獲したオヨギイソハゼの凍結試料を用いて、クライオスタット(CM1520, Leica BIOSYSTEMS)により凍結切片を作成した。この凍結切片をMALDI-TOFの質量分析装置(Ultraflex, Bruker)でバルク分析し、オヨギイソハゼに含有しているセシウムが検出できることを確認した。 次年度以降に元素分布を測定するためのイメージング質量分析装置について、イオン化用のレーザーを照射する光学系を見直して、より均一にレーザーが照射できるように回転式ディフューザーと方形コア光ファイバーを用いたビームホモジナイザーシステムの調整を行い、600μm×600μmの矩形領域へ均質にレーザーを照射して高精細なイオン像を得ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに小型魚類の飼育を行い、飼育期間中の飼育水の溶存元素について概ね計画通りに変動させることができた。セシウムが含まれた飼育水中で採取したオヨギイソハゼについて、質量分析装置を用いた分析によりセシウムの測定を行い、生体内にセシウムが取り込まれていることを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
飼育期間中に作成した凍結サンプルについて、イメージング質量分析装置を用いて生体内の部位ごとの蓄積量の時間変動を観測する。メダカによる予備実験では目の周辺でCs濃度が高くなっていることが確認されているので、この現象がメダカに特有であるかを確認する。眼球は構造的には粘膜によって直接的に外部の飼育水に接触している部分であり、また生体組織としても水分の含有量が多いため、魚類全般に高濃度の蓄積部位となっている可能性も考えられる。これは食用の魚類における可食部の判定に重要な情報になると考えられる。目の周辺をはじめとして、他にも蓄積量の多い部位や、飼育水のCs濃度を下げても蓄積量が減少しにくい部位が確認できれば、生物学的な観点から蓄積しやすい原因を考察する。可食部の判定に関わる蓄積部位について特に有用な事実が判明した場合には、オヨギイソハゼのような小型魚ではなく、実際に食用とされているサイズの大きな魚種を対象にした測定実験についても検討する。
|