2018 Fiscal Year Research-status Report
イメージング質量分析を用いた魚類に取り込まれたセシウムの動態に関する研究
Project/Area Number |
17K17861
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 順 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90452424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イメージング質量分析 / 元素分布測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、投影型イメージング質量分析装置を用いて、魚類に蓄積されたセシウム・ストロンチウムの生体内分布を測定し、その蓄積と排出の詳細な過程を明らかにすることを目的としている。ここで用いている投影型イメージング質量分析装置は当研究グループで開発したものであり、非常に高い空間分解能での測定が可能であるが、ユーザビリティに課題があった。今年度はイメージング質量分析システムを大幅に改良し、サンプルステージの自動化とレーザー照射システムを連動させることで自動連続データ測定が可能になり、測定スピードが大幅に向上した。これまでサイズが20mm程度の小型魚の全身を観測するためには2週間を超える時間(途中で手動調整あり)が必要であったが、この改良により10時間程度で自動測定が可能になり、オーバーナイト測定で1匹の全身像が測定できるようになった。また、サンプル処理方法についても最適なプロトコルを確立し、小型魚サンプルを凍結させて切片作成し表面への金属蒸着するという一連の処理を2時間程度で完了させることが可能となった。これにより1匹の小型魚の観測実験について、サンプル準備から測定・データ処理が1日以内に行えるようになった。現在、このシステムを用いてセシウムを吸収させたオヨギイソハゼの測定を進めており、数ミクロン程度の生体内の構造が観測できることが確認されている。さらにセシウムについても体内で局在していることが観測されており、臓器の特定などのより詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は装置の改良に注力したために、当初計画していた経時変化の測定を全て終わらせることができていない。ただし、装置の改良により当初の想定以上に測定スピードが向上しており、これまでは難しいと考えていた全身像での分布の時間追跡が実現できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
飼育期間中に作成した凍結サンプルについて、改良したイメージング質量分析装置を用いて全身の分布の時間変動を観測する。また、全体的な分布変動に加えて、細胞スケールでの吸収排出メカニズムについても検討を始める。今年度の実験からは、数ミクロン程度の生体内の構造が観測できることが確認できているので、塩類細胞とその周辺の元素分布の観測を試みる。空間分解能が不足する場合には、イオンレンズ系の改良や結像距離の延長によりイオン像の拡大率を上げて空間分解能を向上させることを検討する。
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