2017 Fiscal Year Research-status Report
危険の見返りを小さく認知させることは可能か?-ベネフィット認知低減に関する研究-
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17K17864
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森泉 慎吾 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (50735066)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ベネフィット認知 / リスクテイキング / 労働災害 / 交通事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究背景と目的:労働災害や交通事故の一因となるリスクテイキング等の不安全行動について、その影響要因として「ベネフィット認知(見返りの認知)」の存在とその影響力の大きさが多くの先行研究にて指摘される。つまり、安全教育においては、このベネフィット認知を如何に低下させるかが焦点になると考えられるが、ベネフィット認知の構成要素については未だ明らかになっていない。本研究課題においては、不安全行動に伴うベネフィットの認知がどのような心理的要因によって構成されるかを検証するとともに、それらを踏まえてベネフィット認知抑制のための効果的な安全教育を提案することを目標としている。これにより、不安全行動に関わる人間心理の理解とともに、事故防止といった社会貢献が可能になるだろう。 実施研究:平成29年度においては、上述の研究目的に関して2つの研究を実施した。研究1では、ベネフィット認知の構成要素を特定することを目的として、様々な不安全行動とその行動に伴うベネフィットの種類を用い、かつ様々な年代を対象に質問紙調査を実施した。研究2では、バス運転士を対象に、業務中の運転行動の解析を行った。具体的には、営業中と回送中での運転行動の違いについて比較することで、環境要因の観点から、危険な運転行動の変化の一因となるベネフィット認知の影響について検討した。 成果:研究1についてはリスクテイキングの背景にあるベネフィット認知が主に2つの因子によって構成されうることが明らかとなった。研究2については、営業時と比較して回送時における運転速度の増加が示唆され、「回送時(乗客が居ない状態)」という運転環境の変化によって不安全行動に伴うベネフィット認知が増加する可能性が示唆された。なお、これらの結果は、いずれの研究についてもデータの大まかな傾向であり、現在、より詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者であるバス会社との日程調整や、当初使用を予定していたバスに搭載された機材の変更に伴い、当初の研究計画における方法部分での再構築や実施順序の変更があったものの、平成29年度においては概ね順調に研究を遂行することができたと考える。ただし、研究成果の公表が不十分であったので、来年度以降で積極的に実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】欄に記載した通り、平成31年度に実施する研究を前倒して一部実施したため、平成30年度においては、平成29年度に実施する予定であった研究を中心に実施する予定である。そのため、平成30年度実施予定の研究の進捗が遅れる可能性が想定されるが、一部前倒しで実施している研究もあるため、研究計画全体の進捗には大きな支障はないと予想される。
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Research Products
(2 results)