2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17866
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荒木 徹平 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10749518)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 金属ナノワイヤ / 電荷トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体は、機械的柔軟性を有する電界効果トランジスタ(FET)をシンプルな湿式プロセスにより形成可能であり、無機系半導体では達成しえなかった生体調和性の高いデバイスを実現可能である。本研究では、「有機トランジスタの電荷トラップ機構の解明」という目標を掲げ、有機FETにおける電気伝導阻害機構を定量的に評価することで、有機半導体の電荷輸送および有機-無機または有機-有機界面の相互作用を体系的に理解することが主な目的である。同時に、金属ナノワイヤ電極を用いたオール印刷による透明有機FETの開発を進める。これまでに開発を進めていた印刷透明電極を用いた有機FETにおいて、高い閾値電圧、素子ばらつき、素子特性のヒステリシス、バイアスストレス、高い接触抵抗が存在するという課題があった。今回、金属ナノワイヤ電極、蒸着電極、蒸着有機半導体を測定試料とし、熱刺激電流測定と四端子計測を行うための設計および試作を終えて、それら計測に着手している。同H29年度では、ソース・ドレイン・ゲートに用いる銀ナノワイヤ電極の電子伝導が向上すると、有機トランジスタ特性(移動度やON電流)が向上することを確認した。つまり、網状の導電性ネットワークを形成する銀ナノワイヤ電極において、ネットワーク増加によって電極内電流密度が向上または有機半導体との接触面積が増加したことにより、高いキャリヤ移動度と電荷トラップ低減へつながったことが想定される。さらに、銀ナノワイヤ電極を用いた透明有機FETのアプリケーションとして回路作製および評価まで行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「有機トランジスタの電荷トラップ機構の解明」という目標を掲げ、オール印刷による透明有機FETの開発までを狙った計画である。H29年度では、金属ナノワイヤを用いた印刷透明電極の形成手法や表面処理手法を検討することにより、透明有機FETの高性化に成功した。これら形成技術を用いて実現可能な、熱刺激電流測定と四端子計測用の設計・試作を終えた。さらに、有機FET回路の設計・試作まで行い、金属ナノワイヤを用いたデバイスとしては初めてのフレキシブル電子回路を実現した。以上のように、オール印刷トランジスタの作製に向けて、作製技術および評価技術の構築が当初以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度から引き続き、有機半導体の単結晶薄膜の作製方法を検討や単結晶薄膜へのドーピングを検討する。加えて、銀ナノワイヤ透明電極の表面処理を検討し、オール印刷トランジスタの特性向上を目指す。段階的に、蒸着形成から印刷形成の透明有機FETへシフトしていき、①~⑤の作業を繰り返す。①熱刺激電流(TSC)測定と四端子測定を同時に計測可能な測定系を構築し、計測を行う。②測定で得たデータからトラップ電荷の活性化エネルギーや熱放出される電子の割合を求める。③補助的なデータとして配線インピーダンスや絶縁膜インピーダンスの温度依存性等を測定し、温度に依存した原子・分子揺らぎの大きさがキャリア伝導に与える影響を棲み分ける。④電荷トラップの定量的評価の関連データとして、トランジスタ特性やバイアスストレス評価する。⑤有機FETの電気伝導特性とトランジスタ特性を直接議論して有機半導体の理解を深める。印刷形成デバイスの形成手法を変更しながら①~⑤の繰り返す。H30年度では、蒸着から印刷形成に変更していくと、異なる形成手法による電荷トラップへ影響を定量的に評価可能となる。
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Causes of Carryover |
H29年度では、極めて順調に研究遂行が可能でありながら、在籍研究室の運営費等などで消耗品(ガラス用品、保存用プラスチック用品、配線等)を執行したため、残額がいくらか発生した。この執行した物品は、電極形成時や評価時に必要となり、本研究においても使用可能である。H30年度は、本研究をさらに加速すべく、H29年度の残額はH30年度に分析費・解析費に充てて執行予定である。
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Research Products
(11 results)