2018 Fiscal Year Research-status Report
The Paradox of Mexican Economic Growth: The case of Japanese Automobile Enterprises
Project/Area Number |
17K17874
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
内山 直子 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90738577)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | メキシコ / ラテンアメリカ / 経済 / 自動車産業 / 所得格差 / USMCA / NAFTA |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年8月に刊行された『ラテンアメリカ所得格差論:歴史的起源・グローバル化・社会政策』(浜口伸明編、国際書院)において、第3章「ラテンアメリカの所得格差と社会政策:条件付き現金給付は『世代間の貧困の罠』を断ち切れるのか」の執筆を担当した。本書は国内の ラテンアメリカ経済研究の第一人者と若手らによる21世紀の新たな成長段階に入ったラテンアメリカを所得格差という構造的問題から論じることを試みたラテンアメリカ経済に関する最新の知見をまとめた学術書であり、刊行以来、ラテンアメリカ関係の学術雑誌や一般向け雑誌等において幅広く書評が取り上げられ、関係者の間で注目されている。 また、2018年度は日本貿易振興会アジア経済研究所「ラテンアメリカ政治経済社会」研究会の外部委員となり、同研究所を中心とするラテンアメリカ研究者と広く意見交換を行うとともに、同研究所の発行する『ラテンアメリカ・レポート』誌に「メキシコ自動車産業におけるNAFTA 再交渉とその影響:日系企業を中心に」(vol.35 no.2, pp.55-69, 2019年1月)が掲載された。本論文は、2017 年 7 月に開始された北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉過程と 2018 年 11 月 30 日に合意文書に署名された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の合意内容 および今後のメキシコ自動車産業における USMCA をめぐる議論について、各種現地報道および現地調査の結果も踏まえて検討したものである。本論文の執筆に際し、メキシコシティーおよび日系自動車産業の集積する中西部バヒオ地域に出張し、現地での資料収集および関係者にインタビュー調査を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は着任2年目であり、前年度に比べ研究の機会と時間をある程度確保することが可能となった。特に、日本貿易振興会アジア経済研究所「ラテンアメリカ政治経済社会」研究会の外部委員となり、同研究所を中心とするラテンアメリカ研究者と広く意見交換する機会を得るとともに、同研究所の発行する『ラテンアメリカ・レポート』誌に論稿を寄稿する機会に恵まれたことは、本研究課題の進捗に役立った。 2018年は、アメリカ議会の中間選挙およびメキシコでの大統領選挙の年であったため、トランプ米大統領の主張する北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が本格化し、新たに米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が締結される運びとなったが、本研究テーマはNAFTAおよびUSMCAの動向が鍵となるため、まずは状況の変化をきちんと整理することが急遽必要となり、上述の論文を執筆するに至った。この状況の著しい変化のため、研究計画で予定していたデータ分析には至っていないが、2019年度も引き続き現地調査を続けるとともに、メキシコ自動車産業関連データを用いた実証分析の準備を行いたいと考えている。 また、英語論文「Do Conditional Cash Transfers Reduce Household Vulnerability? Evidence from PROGRESA-Oportunidades in the 2000's」を英文雑誌EconomiAに投稿し、査読対応を行った上で、2019年4月に同誌に掲載が決定したところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたように、トランプ米大統領の主張する北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が本格化し、新たに米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が締結される運びとなったが、NAFTA改定は本研究の計画段階では予想されていないことであった。そのため、状況の変化に伴い将来見通しが著しく不透明となり、現状把握と一部仮説の見直しが求められた。2018年は現状把握とその整理が主なテーマとなったため、当初予定していたデータの収集および実証分析には至っていない。2019年も引き続き、トランプ米大統領とメキシコの新政権の動向次第で状況が一変する可能性を有している。そのため、日々の報道や長期休暇を利用した現地調査によって引き続き現状把握に努めるとともに、データを用いた実証分析に向けた準備を行いたい。 2019年度も日本貿易振興会アジア経済研究所「ラテンアメリカ政治経済社会」研究会の外部委員として活動することも決まっており、現地調査等の成果を国内学会等で発表するとともに『ラテンアメリカ・レポート』に寄稿する予定である。また、実証分析に関しては英語論文にまとめて国際学会での発表および海外ジャーナルへの投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
現地調査のための海外出張費を計上していたが、外部委員を務めたアジア経済研究所の予算で賄ったため。次年度はアジア経済研究所の予算ではなく、本科研費から海外出張費用を賄うことになっており、前年度未使用額を含め、全額使用予定である。
|