2017 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation method of the charge number of laser-accelerated ion
Project/Area Number |
17K17876
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金崎 真聡 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (90767336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固体飛跡検出器 / CR-39 / レーザー駆動イオン加速 / イオン計測 / 価数 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー駆動イオン加速では、高エネルギーかつ高品質なイオンビーム発生が課題とされているが、そのためには、加速メカニズムを明らかにすることが重要である。本研究では、イオンの加速メカニズム解明に貢献するため、高強度レーザーと物質の相互作用によって形成されるレーザープラズマの状態を現す一つの指標となるイオンの価数分布を、固体飛跡検出器CR-39によって明らかにすることを目的としている。 CR-39を用いてイオンの価数を明らかにするためには、あらかじめ、加速器においてエネルギーが既知で価数の異なるイオンを照射し、その後のエッチング処理によって生成されるエッチピットの形状の違いを明らかにする必要がある。 平成29年度は、神戸大学大学院海事科学研究科のタンデムバンデグラフ加速器において、イオン照射体系を構築し、CR-39に対して酸素イオンの照射を行った。具体的には、加速器の0度方向のビームラインに、電場と磁場によってイオンを分光するトムソンパラボラシステムを設置し、様々な価数の酸素イオン及び中性粒子を検出部のCR-39に照射した。トムソンパラボラシステムでは、質量電荷比に応じて検出部でのイオンの入射位置が異なるため、あらかじめ軌道計算によって酸素イオンの価数ごとに入射する位置を求め、エッチング後のCR-39と比較した。CR-39上のエッチピットの位置を、高速画像取得顕微鏡によってマッピングすることで、1~3価の酸素イオンが入射していることが明らかとなった。また、エッチピット開口部のより詳細な形状について光学顕微鏡を用いて解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所において行う予定としていた、二酸化炭素クラスターターゲットを用いたレーザー駆動イオン加速実験は、水素クラスターターゲットを用いた実験となったため、本研究で開発するイオンの価数弁別手法は適用できなかったが、固体飛跡検出器CR-39を用いてプロトンのエネルギースペクトル等を明らかにした。 そこで、平成29年度は、固体飛跡検出器CR-39に対するイオン照射体系の構築を主として行った。加速器におけるイオン照射実験では、当初、偏向磁石によってエネルギーと価数が限定されたイオンのみを照射可能なビームラインにおいてイオン照射を行う予定であった。しかしながら、本研究の目的であるイオンの価数弁別のためには、エネルギーが既知で、異なる価数のイオンが同時に照射されることが望ましい。この点に対して、これまでCR-39に対するイオン照射に利用していなかった加速器の0度方向のビームラインに対して、新たにトムソンパラボラシステムを設置することで解決した。これにより、1枚のCR-39上に、複数の価数のイオンが入射してエッチピットを形成するため、検出器のロットごとの感度のばらつきや、エッチング条件のわずかな違いによるエッチピットサイズの変化を考慮せずに解析を行うことが可能となり、より精度の高いデータベースを構築可能な環境を整えることができた。実際に酸素イオンを照射したCR-39上には、1~3価の酸素イオンと思われるエッチピットが形成されており、そのサイズがわずかに異なることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、イオン照射体系の構築を主としていたため、限られたマシンタイム中のイオン照射実験では複数のエネルギーの酸素イオンを照射することができなかった。そこで、平成30年度は、2度のマシンタイムを利用することで、加速器のターミナル電圧を細かく調整し、幅広いエネルギーの酸素イオンを照射し、データベースの充実を図る。また、酸素イオンのみではなく、炭素イオン等の他のイオン種についても同様の実験を行う。 上記以外に、量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所において行われる水素クラスターターゲットを用いたレーザー駆動イオン加速実験において、CR-39の表面に対するレーザー光やプラズマ等の影響を評価する。通常のレーザー加速イオン計測では、CR-39にレーザー光やその散乱光が入射しないようにするため、CR-39の前面にアルミニウム箔等のフィルターを設置するが、本研究で目的としているイオンの価数を弁別するためには、フィルター内で電荷交換が起こってしまうため使用できない。そこで、フィルターで覆っていないCR-39を集光チャンバーに設置し、一定数のレーザーショットを行った後に、エッチング処理を施し、表面の状態が価数弁別可能な状態であるかを調べる。また、イオンの加速メカニズムを議論するために、詳細なエネルギースペクトルも取得する。
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