2018 Fiscal Year Research-status Report
原核生物のゲノム編集を拓く「DNAを切らない」拡張Target-AID技術の開発
Project/Area Number |
17K17879
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂野 聡美 大阪大学, 生命機能研究科, 招へい研究員 (00513160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 遺伝子工学 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNA を切らずにゲノム編集を行うことのできるTarget-AID の技術を原核生物に応用・最適化することで、バクテリアDNA を切らずに、高効率かつ簡便 なゲノム編集の実現を目的とする。 <基本技術の構築:Target-AID による複数遺伝子同時変異導入とoff-target効果検証> これまでの予備実験より、大腸菌ゲノムにおいて標的とした複数遺伝子内への同時変異導入は、可能であるがその割合は低かった。昨年度、uracil DNA glycosylase inhibitor (UGI) を用いた機能向上Target-AID を作製し、異種6遺伝子の標的部位への同時変異導入が可能になった。しかしその一方で、標的以外の部位にも変異が導入されてしまうoff-target の確率が10倍程度上昇してしまうという欠点があげられた。本年度は、このゲノム編集ツールの正確性を向上させるために、deaminase 結合部位のリンカー長を変えるなどしてUGI を用いないTarget-AID の改良、培養条件の検討などを行った。 <ゲノム編集ツールの汎用性拡大> 大腸菌の菌株の違いに対する、種々の遺伝子への変異導入効率を検証した。同一の標的でも菌株が異なることで変異導入のされやすさが異なるケースがあり、今後さらなる追加検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年6月末に第3子を出産した。それに伴い、4月から8月末まで産前産後休暇を取得、その後育児のため休業し、12月に復職した。また、産前は切迫早産 等の体調不良が続き、1月から3月は休みがちであったため、当初予定していたH30年度の計画がほぼ遂行できず、大幅に遅延してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
<基本技術の構築:Hyper Target-AID の作製> 引き続き、ゲノム編集をより効率の良いものにするために、機能向上Target-AID (Hyper Target-AID) の単離・同定を行う。具体的には、Cas9の非特異的結合を低下させる変異体や酵素を融合しているリンカー長の改変等による改良を行い、Hyper Target-AID を作製する。 <他の原核生物にも適用するための、ゲノム編集ツールの汎用性拡大> 構築したゲノム編集技術の汎用性を拡大するために、他の原核生物にも適用できる変異導入ツールへと発展させ、実用化に向けた研究を推進する。 原核生物のなかには、プラスミド自体を導入することが困難な種も存在する。その生物にも本技術を適用できるように、プラスミドを用いない技術の検討を行う。まずは、Target-AID をプラスミドから発現させた大腸菌株に合成crispr-gRNA を導入し、変異導入することを目標とする。もし、上記の計画通り進まない場合の対策として、放線菌、シアノバクテリア等、プラスミド導入可能な原核生物に適用できるよう本技術の改良もあわせて行う。それぞれの菌種に対するシャトルベクター、codon usage等を検討しながらプラスミドの改良、導入系の構築を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、2018年6月の出産に伴い、産前の体調不良による欠勤(1~3月)と産前産後休業(4月~8月)、育児休業(9月~11月)を経て12月に復職したため、予算延長申請を行い次年度に繰り越した。 翌年度は、新たに構築した複数の改変Target-AID についての機能を次世代シークエンサーで詳細に解析することや、大腸菌以外の原核生物におけるTarget-AID ついてのcodon usage を合わせた遺伝子合成、オリゴ合成を行う予定であり、繰り越した助成金を使用する予定である。
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