2017 Fiscal Year Research-status Report
「忘れられる」権利概念の意義と体系的整合性に関する研究
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17K17899
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村田 健介 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00551459)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 個人情報 / 忘れられる権利 / プライヴァシー / 差止請求 / 無体所有権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,「忘れられる」権利概念の日本法における意義と射程を明らかにすることを目的とするものであるところ,本研究課題の実施開始直前,平成29年1月31日に,プライヴァシーに基づく差止請求について,最上級審として初めてその基準を定立した最高裁決定(民集71巻1号63頁)が下された。本件の下級審決定においては,「忘れられる」権利に関する言及もなされており,本件に関する一連の決定は,本研究を進めるにあたって,立ち入った検討が不可欠なものであった。そこで,平成29年度は,これらの決定の意義と射程について検討を加えることで,日本法の現状に関する認識をアップデートすることを中心課題に据えた。 その結果,日本においては,本件のようなプライヴァシー侵害として構成し得る場面においては,「忘れられる」権利概念に何らかの意味を持たせることは正当化できず,従来の法理の枠内で対応可能であることを明らかにした。一方で,自らが公表したために広く流布している情報について,これを公衆の目に触れないようにしたいと考えた場合の削除等請求を基礎付けるための「スローガン」としては,「忘れられる」権利はなお意味を持ち得るということを明らかにした。また,平成29年決定も含めた最高裁判例は,このような場面における削除請求を(積極的に肯定してもいないが)否定するものではないとの見方を明らかにした。以上の研究成果は論説・判例評釈において発表するとともに,研究会における報告・質疑報告を経て,今後の更なる検討課題を得るに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法の検討については,上記の通り,平成29年の最高裁決定を踏まえた検討を進めることができ,また,論文・判例評釈の公表や研究会報告等により,他の研究者・実務家からの指摘・教示も受けてブラッシュアップを図ることもできた。したがって,日本法の検討に関しては,当初計画よりも踏み込んだ検討をできたものと考えている。 一方,外国法の検討については,日本法を中心に検討を進めたという事情もあり,やや遅れがちにはなっているが,パリにおいて文献収集を行い,今後の検討に必要な最新文献を得ているため,平成30年度以降の外国法研究を進められる体制は整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り,平成29年度において,日本法の検討は進めることができた一方,外国法の検討はやや遅れがちである。そこで,平成30年度においては,外国法の検討を中心にして進める。もっとも,日本法においても,平成29年の最高裁決定に関する評釈・解説,同決定や「忘れられる」権利に言及する論説等は今後も現れるものと考えられるので,その検討を怠ることのないように研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度は,外国旅費が想定よりも低額で済んだため残額が出た。平成30年度の外国出張旅費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)