2017 Fiscal Year Research-status Report
乳酸菌を用いた加糖卵白発酵と卵白タンパク質由来機能性ペプチドに関する研究
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17K17902
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
荒川 健佑 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50609930)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 卵白 / 発酵 / Lactobacillus casei / Lactobacillus paracasei / Lactobacillus rhamnosus / Lactobacillus zeae / リゾチーム |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】 卵は、乳や肉とともに、豊富な栄養素をバランス良く含む畜産食品として古くから食されてきた。また、凝固性・起泡性・乳化性といった特性を有することから、重要な加工原料の1つとして食品利用されている。しかし、卵には糖分が少なく、卵白に抗菌作用やプロテアーゼ阻害作用を示すタンパク質が豊富に含まれることから、乳や肉と異なり、発酵原料としてはほとんど利用されてこなかった。ところが近年、新たな呈味や機能性を付与した卵加工品およびその原料の開発を目指して、酵母エキス等の乳酸菌生育促進成分を添加することによる液卵発酵が行われるようになってきた。そこで本研究では、風味に影響を与える酵母エキス等の添加無しに、加糖のみで卵白発酵を実現する乳酸菌を選抜し、その発酵要因の一端を解明することを2017年度の目的とした。
【研究成果】 供試した乳酸菌44菌株のうち、加糖卵白中で比較的良好な生育性を示した6菌株を卵白発酵乳酸菌として選抜した。選抜6菌株はいずれもLactobacillus caseiグループ乳酸菌(Lb. paracasei subsp. paracasei、Lb. rhamnosus、Lb. zeae)であった。次に、抗菌卵白タンパク質に対する耐性を調べたところ、卵白発酵乳酸菌・非発酵乳酸菌ともにオボトランスフェリンとアビジンの影響は受けなかったものの、リゾチームに対しては、卵白発酵乳酸菌が耐性を示す一方で、非発酵3菌株は感受性を示した。さらに、供試乳酸菌44菌株のリゾチーム耐性を評価したところ、Lb. caseiグループ乳酸菌に共通して高いリゾチーム耐性が認められた。以上の結果から、卵白発酵乳酸菌としてLb. caseiグループ乳酸菌が選抜され、そのリゾチーム耐性が卵白発酵を可能にしている1つの要因であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、加糖卵白発酵乳酸菌としてLactobacillus caseiグループ乳酸菌を選抜した。また、その発酵要因の1つがリゾチーム耐性にあることを明らかにした。加えて、選抜した卵白発酵乳酸菌のゲノムシーケンシングを行った。当初の計画では、これらに加えて、発酵過程で分解・資化される卵白タンパク質の特定を行う予定であったが、試験したところ、主要な卵白タンパク質が万遍なく分解されていたことから、資化タンパク質の特異性はないと判断し、詳細な検討は見送った。以上から、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2017年度に選抜した加糖卵白発酵乳酸菌のゲノムシーケンシングを行ったので、その解析を行うことを2018年度の最初に予定している。次いで、リゾチーム耐性以外の発酵要因として考えられる、加糖卵白発酵乳酸菌の菌体外プロテアーゼの特異性について、酵素活性およびタンパク質レベルから検討することを計画している。加えて、余裕があれば、非選抜乳酸菌の卵白発酵を阻害している卵白成分の特定を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
生じた次年度使用額(B-A)は10,683円と少額であり、研究計画に影響は無い。よって、2018年度も当初の計画通り使用予定である。
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