2017 Fiscal Year Research-status Report
分子内水素結合を起点とするエナンチオ選択的アシル化反応の開発
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17K17903
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
萬代 大樹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60534427)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不斉求核触媒 / エナンチオ選択的アシル化 / 位置選択的アシル化 / ポリオール / DMAP / 糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らが開発した光学活性DMAPは触媒の第三級アルコール部位による水素結合を通じて反応基質の活性化が可能であり,この効果により様々な反応に対して触媒の高活性化・低触媒化を可能にしている.特に反応基質に分子内水素結合を形成するようなジオール部位をもつ基質は高エナンチオ選択的にモノアシル化体が得られる.そこで本研究では,これまでに観測された現象がその他の反応基質に拡張可能か詳細に検討を行った. 本年度は生物活性化合物中に見られる合成の難易度が高い光学活性1,3-ジオールおよび糖類の位置選択的モノアシル化を試みた.まず第一級ヒドロキシル基をもつ1,3-ジオールをモデル基質として,種々検討を行ったところ,第三級アルコールをもつ光学活性DMAP誘導体を用いると高エナンチオ選択的にモノアシル化反応が進行した.ここで得られるモノアシル化体は第一級ヒドロキシ基を1つ残しているが,これがさらに反応する過剰反応は極めて遅いことが確認された.本反応の特筆すべき点は,触媒が酵素のように反応基質のジオール部位を選択的に認識し,アシル基を特定のヒドロキシ基にピンポイント,かつエナンチオ選択的にアシル基を導入できていることである.そしてモノアシル化された目的物は,もはや触媒との間で有効な水素結合ネットワークを形成することができないので,これ以上のアシル化は進行しない(過剰反応の抑制).これは光学活性DMAPがジオール部位を認識し,モノアシル化を効率的に促進していることを裏付ける結果である. 次に3つ以上のヒドロキシル基をもつ糖においても,位置選択的モノアシル化が選択的に進行することを見いだしており,様々な糖に適用できる基質一般性のある優れた反応系を確立することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エナンチオ選択的なアシル化反応が1,2-ジオールだけではなく,他の反応基質に拡張可能か詳細に検討を行ったところ様々な知見が得られた.とくに,1,3-ジオールや糖に対してエナンチオ選択的あるいは位置選択的アシル化反応が進行したこと極めて意義深く,画期的であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は位置選択的かつエナンチオ選択的アシル化に必須なジオールの構造・相対立体配置を明らかにする.例えばジオール間の距離やヒドロキシ基の相対立体配置(シス,トランス)と選択的アシル化反応の相関関係についても検証する.またキラルビルディングブロックの迅速合成を指向した天然物由来のポリオールを用いる反応について検討を行う予定である.
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Research Products
(17 results)