2018 Fiscal Year Research-status Report
間接的発話の理解における個人差を説明するモデルの構築:報酬に基づく学習の観点から
Project/Area Number |
17K17912
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平川 真 広島大学, 教育学研究科, 講師 (50758133)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 間接的発話行為 / 発話理解 / 間接的要求 / 報酬・罰感受性 / Q学習モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、間接的要求の解釈傾向の個人差がどのように発生するのかを説明することを目的としている。 平成30年度の目的は二つあった。一つは、具体的な会話場面での発話の解釈として妥当な解釈を判断するという課題を通して、調査対象者の間接的要求の解釈傾向を測定する尺度を開発することである。もう一つは、開発した尺度と学習課題の学習率との関連を検討することである。 一つ目の目的について、その成果を報告する。平成29年度に実施した予備調査の結果を踏まえて課題の形式を設定し、19~49歳のアンケートモニタ1000名を対象としたweb調査を行った。課題の形式は、具体的な発話場面と要求の解釈を呈示し、その妥当性を判断してもらうというもので、間接的有級として解釈可能な発話を含む会話場面を計40場面作成して実施した。データに対して項目反応理論の2母数ロジスティックモデルを適用し、項目のパラメタ推定を行い、尺度の評価を行った。 二つ目の目的について、その成果を報告する。社会的学習の能力と間接的要求の解釈傾向が関連するという仮説を検証するために、大学生・大学院生計84名を対象に先に開発した尺度への回答と学習課題の実施を求めた。学習課題については、その課題で要求される能力を変化させた2種類を設定した。間接的要求の解釈傾向は、1000名のデータで推定した項目パラメタを利用して、推定を行った。社会的学習の能力については、学習課題課題成績とQ学習モデルの学習率パラメタをその指標とした。間接的要求の解釈傾向と社会的学習の能力の指標との関連を検討した結果、間接的要求の解釈傾向と社会的罰が確率的に提示される刺激についてのQ学習モデルの学習率パラメタが正の相関関係にあることが示された。ただし、社会的罰の刺激に対する課題成績と解釈傾向は相関しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の主な目的は、間接的要求の解釈傾向と社会的学習能力の関係を検討することであり、Q学習モデルの学習率パラメタとの相関関係を示した。また、平成29年度に実施予定であった間接的要求の解釈傾向の開発については、平成30年度で達成した。 以上の事から、計画通り、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って、間接的要求の解釈に社会的な報酬と罰を随伴させるという操作によって、個人の解釈傾向が変動するかを検討する。 また、間接的要求の解釈傾向と社会的学習能力の関係の検討を行ったことが平成30年度の成果であるが、新たに検討しなければならない点がみえてきた。平成30年度の検討において、社会的学習能力については学習課題の成績とQ学習モデルの学習率をその指標とし、間接的要求の解釈傾向との関連を検討した。仮説では、両者の指標が社会的学習能力と関連すると考えていたが、その関連の仕方は指標によって異なっていた。すなわち、Q学習モデルの学習率パラメタと間接的要求の解釈傾向が関連していることを示したが、一方で、学習課題の成績については、間接的要求の解釈傾向と関連していないことが示された。学習課題の成績と解釈傾向が相関していないため、単純に「間接的要求の解釈傾向と社会的罰による学習が関連している」と解釈することはできない。特にQ学習モデルの学習率パラメタについては、それを心理学的にどのように解釈すべきかを検討する必要があると判断した。
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Research Products
(2 results)