2017 Fiscal Year Research-status Report
USP15の脂質代謝調節機能が妊娠で果たす役割の解析
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17K17919
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坂井 祐介 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (60615722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | USP15 / 雌性生殖器 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
[野生型マウスにおける子宮の組織学的解析] 各発情周期のマウス子宮を採材し、抗USP15免疫染色とオイルレッドO染色による脂肪染色を行ったところ、発情間期でのみUSP15陽性シグナルが子宮内膜上皮内に観察され、オイルレッドO陽性脂肪滴もこの発情間期でのみ子宮内膜上皮に観察された。このことから、子宮内膜上皮における脂肪滴の形成はUSP15の発現と関連することが推測された。また、USP15に対する免疫染色と脂質染色の二重蛍光染色を行うと共局在することから、USP15は脂肪滴の形成や維持に関連すると考えられた。PPARαに対する免疫染色も同時に行ったが、全ての発情周期において子宮内膜上皮細胞で陽性となりUSP15や脂質蓄積との関連は認められなかった。 [USP15欠損マウスの雌性生殖器の構造解析] USP15欠損マウスの各発情周期における子宮と卵巣を組織学的に解析した。子宮において子宮内膜上皮細胞の減少などの組織学的異常は認められなかったが、卵巣の黄体のサイズが小型化しておりUSP15は子宮の組織形成には関与しないが黄体発育に関連することが示唆された。また、黄体や子宮内膜上皮細胞における脂質の蓄積をオイルレッドO染色により調べたところ脂質蓄積量が減少していることがわかった。これらのことから子宮だけでなく黄体においてもUSP15が脂質の蓄積に関与することが推測された。 [培養細胞系での解析] USP15の子宮内膜上皮における役割を調べるためにステロイド感受性子宮内膜上皮細胞株Ishikawa細胞を用いた実験を行った。まず、CRISPR/Cas9システムによりUSP15欠損Ishikawa細胞を作成し、子宮内膜上皮細胞の増殖や遊走を促すHGF処理を行いscratch assayにて細胞運動活性を調べたところUSP15欠損細胞では細胞運動活性が低下することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた解析は、①野生型マウスを用いた解析、②USP15欠損マウスを用いた解析、の2つである。①の野生型マウスを用いた解析では、①-1 免疫染色を用いた子宮および卵巣におけるUSP15の発現解析、①-2 子宮および卵巣組織標本に対する脂質染色による脂質蓄積の解析ではUSP15と脂質蓄積との関連を示唆する結果が得られ予定通り推移している。①-3 Western blottingやReal time PCRを用いた発現の定量解析は現在解析中であり遅れが生じているが、替わりに①-4 組織標本を用いたUSP15の蛍光免疫染色と脂質蛍光染色による二重蛍光染色によりUSP15と脂質蓄積との関連性を支持する結果が得られており順調に推移していると言える。また、①-5 USP15関連因子の免疫染色による発現解析はPPARsや脂肪滴関連因子について既に行った。発現定量は①-3と共に次年度に行う。 ②USP15欠損マウスを用いた解析では、②-1 組織異常の評価、により子宮の組織構築にUSP15は影響を及ぼさないこと、黄体の小型化が見られるという二点が明らかとなった。②-2 脂質蓄積の評価についてはUSP15欠損マウスでは脂質蓄積が減少するとの結果を得て解析を終えている。②-3 血清中生殖関連ホルモンの定量については条件検討中であるが、組織サンプルを用いて、次年度に行う予定であった②-4 Ki67およびcleaved caspase3に対する免疫組織化学的解析を終えており、概ね順調と言える。 上記のように①ではわずかに遅れが生じているが培養細胞系においてUSP15欠損子宮内膜上皮細胞株という強力なツールの作成を行うことができたため、USP15の機能解明を目的とした次年度の研究に向けて順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標は①雌性生殖器におけるUSP15の発現制御機構を知ること、②子宮や黄体におけるUSP15と脂質代謝関連因子との相互作用を解明すること、③USP15が雌性生殖ホルモンの分泌に及ぼす影響を調べること、④USP15の脂質代謝や雌性生殖ホルモン分泌以外の機能について調べること、の4点である。まず、①雌性生殖器におけるUSP15の発現制御機構を知るために、本年度行う予定であった野生型マウスの子宮および卵巣サンプルを用いたWestern blottingやReal time PCRによりUSP15の発現の定量解析を行うことでUSP15の発現が生殖周期と関連することを証明する。これと共にステロイド感受性子宮内膜上皮細胞であるIshikawa細胞を用いて各種生殖関連ホルモン処理を行った後にUSP15のタンパク量やmRNA量を定量解析することでUSP15の発現変動を解析する。次に、②子宮や黄体におけるUSP15と脂質代謝関連因子との相互作用を解明するために、いくつかの脂肪滴関連因子に着目し発現ベクターを用いたプルダウンアッセイによる相互作用解析を培養細胞系で行うと共にUSP15欠損マウスと野生型マウスにおける当該因子の発現量の違いをWestern blottingやReal time PCRにより調べる。また、本年度に採取した組織標本に対する蛍光二重染色も用いてUSP15と当該因子の共局在なども解析してゆく。③USP15が雌性生殖ホルモンの分泌に及ぼす影響については本年度に行う予定であった血清中雌性生殖関連ホルモンの定量解析を行う。最後に④USP15の脂質代謝や雌性生殖ホルモン分泌以外の機能については他の実験で明らかにしたHGFシグナル伝達との関連性を踏まえた解析を行う。
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