2017 Fiscal Year Research-status Report
環境行政訴訟上の原告適格についての司法による法の継続形成の可能性
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17K17927
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
小澤 久仁男 香川大学, 法学部, 准教授 (30584312)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境法上の団体訴訟 / 原告適格 / 排除効 / オーフス条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ環境法における団体訴訟の展開について分析をするものである。そして、このテーマは従来までも多くの研究がなされてきた。そこで、本研究においては、ドイツ環境法上の団体訴訟導入後の状況、とりわけ環境行政訴訟における原告適格論の動向を分析することで、環境行政訴訟の意義を明らかにし、今後のわが国の展開を検討する。 そして、平成29年度研究は、基礎的問題整理作業を行った。その際、①環境行政訴訟における団体訴訟の位置付けに関する議論の整理、②オーフス条約およびEU法に関する動向、③ドイツ原告適格論・団体訴訟論の新展開という3つの視点から分析を行うことにした。まず、①については、団体訴訟の研究における根幹ともいえ、団体訴訟の正統性(正当性)、すなわち何故、環境保護という利益もしくは環境破壊による不利益を環境保護団体が代表して享受し裁判を提起する権能を付与するのかということである。次に、②については、ドイツに対しても影響が強い、欧州裁判所の動向を探るということである。最後に、③については、②も踏まえた上で、ドイツ国内の立法状況・学界動向を探るということである。 これらのうち、平成29年度研究は、とりわけ②と③の視点を重視して研究を行った。その結果、次のような知見を得ることになった。すなわち、欧州裁判所において、ドイツ環境法上の団体訴訟の特色の1つであった排除効の規定が欧州法違反とされたことによって、ドイツは(少なくとも形式上)排除効の規定の廃止に至っており、これに代わって信義則規定を置くことになった。もっとも、この信義則規定は、運用次第で、これまでと大きく変化しない可能性もあることから、今後もドイツの判例・学説の動向を追跡する必要がある。 以上より、平成29年度研究は、欧州裁判所の動向を受けたドイツの対応を追跡することにより、次年度以降の基礎的問題整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載した通り、欧州裁判所による判決後、ドイツにおいては、環境・権利救済法における排除効の廃止に至っている。もっとも、その後のドイツの状況は、今後も更なる議論を呼ぶ可能性もあるし、これら判断や立法に至った背景についても更なる分析をする必要がある。それゆえ、このような団体訴訟の導入後の原告適格論や団体訴訟論への影響を探ることで、環境問題における司法権の役割や行政訴訟の意義を考察していきたいと考えている。 以上より、平成29年度研究は、今後検討すべき課題や方向を明確化することができたものと考えているため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上までのドイツの状況を踏まえて、平成30年度研究は、排除効が設けられた背景およびその後のドイツの状況についての研究を行う必要性があると考えている。このような視点から、環境問題における司法権の役割や行政訴訟の意義を考察していく。このような研究を通して、伝統的な司法観および権利・利益概念に固執していると言われるわが国の行政訴訟との関係で、理論的・立法論的・実務的にも綿密な比較研究を行うことができ、わが国の議論に還元することが期待できると思われる。
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Causes of Carryover |
【理由】受給者の本務校では、図書の発注が、洋書が2017年11月30日までで、和書は2018年1月7日までであった。そのため、予定額の執行を行うことができなかった。 【使用計画】上記の期間に執行できなかった分については、随時、速やかに執行する予定である。
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