2018 Fiscal Year Research-status Report
色覚デジタルカラーフィルタ:色覚異常者のための色覚バリアフリーな呈示手法の提案
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17K17928
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
佐藤 敬子 香川大学, 創造工学部, 講師 (30647889)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 色覚異常 / カラーフィルタ / 輝度コントラスト / 色弁別性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,色覚異常の型ごとに効果的な「色覚デジタルカラーフィルタ」の作成を目指して,3年の研究期間内において,3つの課題を設定して研究を進めている。具体的には,カラーフィルタにより色覚異常者の弁別性が向上するメカニズムを解明し(課題1),そのメカニズムに基づき1型色覚異常に有効なカラーフィルタを作成し(課題2),フィルタの有効性を2種類の視覚実験により示す(課題3)ことである。これら3つの課題に取り組むことにより,既存の色覚バリアフリーシステムとは異なる概念に基づいた,新しい,より自然な視環境の提供を可能にするカラーフィルタ理論の確立を目指すことを目的としている。平成29年度は,課題1に取り組んだ。具体的には,申請者らが作成したカラーフィルタ(デジタルカラーフィルタ)によって色覚異常者の弁別性がどのようなメカニズムで向上するのかを調査した。
平成30年度は,課題2の1型用フィルタ作成のための理論考案,及び色覚異常の強度に沿ったデジタルカラーフィルタの作成を目指すため,色覚異常の強度を簡便に判断する手法について研究を行った。色覚異常は型だけでなく,強度にも多様性があり,異常強度が変われば見えも変わる。異常強度を測定するアイデアとして,異常3色覚の異常強度を弱度から強度に設定し,各見えを表現した変換画像を用いた。実験では,色覚異常者16名(1型:2色覚3名,異常3色覚5名,2型:2色覚3名,異常3色覚5名)に対し,錐体感度関数のシフトによるシミュレート画像(計15枚)を用いて,シフト量と色覚異常者の異常強度(アノマロブコープで診断された異常強度)に関係があるかどうかを調べた。その結果,シフト量と異常強度の間には正の相関があることを示し,変換画像を用いて簡易に色覚異常の強度を測定できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に示した,平成30年度の計画内容(そのメカニズムに基づき1型色覚異常に有効なカラーフィルタを作成し(課題2))は完全には達成されていないが,理論の構築についてはおおむね達成されたため。課題1の結果については視覚実験系で歴史のある英語論文誌に採択された。また,課題2の研究結果については,1件の国内学会発表にて報告済み,関連する研究成果も英語論文誌と国際会議に1件ずつ,国内学会にて1件発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,課題1で明らかにしたフィルタによる弁別性向上のメカニズムに基づき,1型色覚異常に対して有効なフィルタを作成し,様々な型と強度の色覚異常者を対象にして,フィルタの実用性を評価するための視覚実験を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
当初計画していた物品の購入(ソフトウェア)が予定よりも安く購入できたため。平成31年度において、視覚実験の精度を高めるため、視覚刺激呈示装置ViSaGeに装備するキャリブレーションシステムを追加購入する予定である。
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