2017 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素の可逆な錯形成を利用した高結晶性塗布型有機半導体材料の開発とデバイス応用
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17K17937
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 恭平 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 学術研究員 (00778904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機半導体 / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
印刷プロセスに適用できる高性能有機半導体材料の開発は、有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池の実用化の観点から非常に重要である。塗布プロセスによる電子デバイス作製を見据えて、配位性分子との錯形成により可溶性および結晶性を可逆に制御できる有機半導体材料の開発を目指した。そのような材料として分子中央に空の軌道を有するホウ素原子を組み込んだ骨格に着目し、新規材料の開発に取り組んだ。その結果、反応活性な官能基を適切に選択することで、温和な条件でホウ素と硫黄を有する多環骨格を一挙に構築する合成法を見出した。また、合成の最終段階でホウ素原子を導入するため、不安定な有機ホウ素化合物を取り扱う必要がないという利点ももつ。合成した材料は高い熱安定性を示し、真空化での昇華精製による高純度化も可能であった。X線結晶構造解析の結果、得られた骨格は高い平面性を有するとともに、固体中でパイスタッキング構造を形成することが明らかになった。一方で、導入した置換基の立体障害の影響により、分子間の軌道相互作用が制限されてしまい、電荷輸送に有利なパッキング構造は形成していなかった。今後は、有機半導体材料に適した分子配向の発現を期待して、様々な置換基の導入を検討するとともに、実際に素子作製を行い、有機半導体特性の評価を進める予定である。また、本研究の材料開発の過程で、熱活性化遅延蛍光材料へ展開できる発光材料を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた、ホウ素原子を組み込んだ高平面性骨格の開発を達成できた。目的とする電荷輸送に適した固体構造が得られず、有機半導体特性の評価には至らなかったものの、強い分子間相互作用の発現を示唆する結晶構造が得られている。合成に用いた反応としては、様々な誘導体を合成可能であり、導入する置換基の種類、位置を変化させることで、この問題を克服していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
有機半導体材料に適した固体構造の実現を目指し、様々な誘導体の合成を検討する。また得られた骨格の錯形成能の評価も行い、塗布プロセスによる有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池素子作製を進める。
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