2017 Fiscal Year Research-status Report
ポリグルタミン病におけるタンパク質リン酸化酵素NLKの機能解析と新規治療法の検討
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17K17942
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
石谷 閑 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (90608861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリグルタミン病 / Nemo-like kinase (NLK) |
Outline of Annual Research Achievements |
NLKは、神経組織に豊富に発現するタンパク質リン酸化酵素である。私たちはこれまで、NLKが多様なシグナル分子のリン酸化を介して神経前駆細胞の増殖・分化や神経細胞の軸索伸長などに関与することを報告してきた。また、NLKの生理機能をさらに詳細に明らかにするためにNLKの特異的阻害剤の開発を進めてきた。一方で最近、海外のグループによって、ポリグルタミン病モデルマウスの病態がNLK遺伝子のノックダウンにより有意に改善することが示された。ポリグルタミン病におけるNLKの分子機能の詳細は未だ不明ではあるが、この報告は、私たちが開発したNLK阻害剤がポリグルタミン病の有効な治療薬となる可能性を示している。そこで本研究では、ポリグルタミン病におけるNLKの分子機能を明らかにするとともに、私たちが作製した NLK阻害剤のポリグルタミン病に対する治療効果を検討する。 本年度は、NLKによるポリグルタミン病の原因タンパク質の制御機構の一端を明らかにした。まず、NLKによる原因タンパク質のリン酸化部位の一部を同定し、その部位特異的な抗リン酸化抗体を作製した。さらにリン酸化部位に変異を導入した変異型タンパク質を用いた生化学的・細胞生物学的解析により、NLKによるリン酸化が、原因タンパク質の蓄積を促進していることを見いだした。加えて、NLK阻害剤による治療効果を効率的に評価する為に、神経細胞株を用いた細胞ベースの定量評価系を構築した。NLK阻害剤の薬物動態を解析する系も構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLKによる原因タンパク質のリン酸化部位の一部同定に成功し、抗リン酸化抗体作製も順調に進んでいる。また、NLKによるリン酸化が、原因タンパク質の蓄積を促進することも確認できた。また、NLK阻害剤の評価系構築も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度で構築したNLK阻害剤の効果をin vitroで評価する系を用いて、現在得られているNLK阻害剤化合物群からポリグルタミン病治療薬の候補となる化合物をスクリーニングする。さらに、ポリグルタミン病モデル動物を用いて、この候補化合物のポリグルタミン病に対する治療効果を検討するとともに、さらなる最適化を行い、本疾患の新たな治療薬とすることを目指す。また、前年度明らかにしたNLKによるポリグルタミン病原因分子の制御機構をさらに詳細に解析するとともに、この制御機構が生体内においても起きていることを、ポリグルタミン病モデル動物を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
一部の解析を共同研究者に依頼したため、解析に関わる費用の一部を節約できた。また、共同研究者との打ち合わせをメールやテレビ会議を中心に行ったことや、年度途中で九州大学から群馬大学へ異動したことにより、当初予定よりも旅費を節約できた。30年度は29年度に確立した実験系を用いて精力的に解析を進める予定であり、これにあたって大量の消耗品や動物を使用する見込みである。次年度使用となった研究費は、これらの購入費にあて、研究促進を図りたい。
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