2017 Fiscal Year Research-status Report
Ir 触媒によるπ共役エナミンをドナーとする新規 D-A 化合物の合成
Project/Area Number |
17K17944
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田原 淳士 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50713145)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エナミン / D-A化合物 / イリジウム / ヒドロシラン還元 / 機能性材料 / ソルバトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、ドナーとしてエナミンを有する種々のドナー・アクセプター(D-A)型化合物を合成し、機能性材料としての応用について検討することを目的としている。我々は過去の研究において、Vaska型イリジウム錯体を触媒に用いたアミド化合物のヒドロシラン還元によって、対応するエナミンへと選択的に変換する手法を見出している。本手法を用いて、p-位に種々の電子求引性置換基を有するフェニル酢酸アミド化合物から、対応するD-A型π共役エナミンを合成することに成功した。特筆すべきは本反応の官能基耐性である。電子求引世紀置換基は一般にヒドロシランとの親和性が高く副反応が予想されたが、最適な反応条件を選定することで、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基に加え、アルデヒド、ケトン、エステルといったカルボニル基存在下でも選択的にアミドのみをエナミンへと変換することに成功した。またアクセプターのみならず、ドナー部位をジフェニルアミノ基からビス(4-メトキシフェニル)アミノ基やフェノキサジニル基への変更、リンカー骨格をフェニレンからチオフェニレンへと変換することにも成功した。 得られたD-A型π共役エナミンのいくつかは興味深い発光特性を発現し、溶液の極性に応じて発光波長が変化するソルバトクロミズム特性を確認した。さらに、アクセプターとしてニトロ基を有するエナミンについて、量子収率65%以上での発光を達成した。この値はニトロ基を有する化合物において極めて高い量子収率であり、エナミン特有の物性が発現された成果といえる。上記の物性については国内および国際学会での発表を行ったほか、国内特許出願およびPCT出願を達成している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、本申請研究では、電子求引性置換基を有するアミド化合物のヒドロシラン還元によって、ドナーとしてエナミンを有する種々のドナー・アクセプター(D-A)型化合物を合成し、機能性材料としての応用について検討することを目的としている。これまでにアクセプターとしてニトロ基、シアノ基、ハロゲン基に加え、アルデヒド、ケトン、エステルといったカルボニル基について、本反応が適応可能であることが明らかとされている。得られたD-A型π共役エナミンのいくつかは興味深い発光特性を発現し、溶液の極性に応じて発光波長が変化するソルバトクロミズム特性を確認した。当初想定していなかった成果として、アクセプターとしてニトロ基を導入した際にも、高い量子収率で発光現象が確認されたことである。本成果を受け、当初予定されていなかった、アクセプター基をニトロ基に限定した種々のD-A型π共役エナミンの合成および物性評価へと研究が展開している。これらの成果は、ニトロ基の電子状態や電子遷移およびエナミン特有の発光現象を解明するための実験証拠を提案するものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、種々のアクセプター、ドナー、リンカーについて、本触媒系が適応可能であることを確認している。次年度からは応用を志向したD-A型π共役エナミンの分子設計に着手する。具体的には、①D-A-D型、A-D-A型といった拡張系でのオリゴエナミン分子の合成および機能評価、②親水性、親油性基の導入による水系・非極性溶媒系での発光の達成、③エナミン骨格の環化による物性の向上、等を目標とする。一連の研究を踏まえ、物性評価を理論と実験の融合により行い、学術的にも工業的にも意義のある学問体系の構築を目指す。
|
Causes of Carryover |
本申請研究では、種々のアクセプター、リンカー、ドナーを有するD-A型π共役エナミンの合成をイリジウム触媒を用いて達成することを目的としている。初年度は、基質となるアミドを様々な種類で合成する必要があり、大学院生、研究員を含む人件費に支出を回した。一方で、対象の基質となるアミドは既に所属する研究室が保有するカルボン酸からの合成が可能だったため、物品費の節約が可能となった。次年度は、応用を志向したD-A化合物の合成に着手するため、これまで研究室が保有していない化合物や測定環境を整える必要がある。また、特許の出願が完了したため、得られた成果を論文又は国内外の学会において発信するため、旅費や論文の英文校正料を確保する必要がある。以上の観点から、上記の次年度使用額を適正に執行する予定である。
|
Remarks |
本展示内容は鉄研究に基づく成果がメインだが、元素戦略の観点から元素減量を達成した本申請課題の成果についても併せて展示された。
|
Research Products
(10 results)