2018 Fiscal Year Research-status Report
Ir 触媒によるπ共役エナミンをドナーとする新規 D-A 化合物の合成
Project/Area Number |
17K17944
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田原 淳士 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50713145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エナミン / D-A化合物 / イリジウム / ヒドロシラン還元 / 化学選択的還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、ドナーとしてエナミンを、アクセプターとしてハロゲンやシアノ基、ニトロ基といった種々の電子求引性置換基を有するD-A型π共役エナミンを合成し、それらの紫外可視および蛍光スペクトルを測定することで、光機能に関する系統的な評価を行った。この有機合成においてカギとなるのが、申請者が開発したイリジウム錯体を触媒としたアミド化合物のヒドロシラン還元であり、シアノ基やニトロ基といった、ヒドロシランによって分解し得る官能基存在下においても、アミド選択的に反応が進行することを明らかにしてきた。今年度は、より化学選択的な反応の達成が困難な、ケトンやアルデヒドを分子内に含むアミド化合物とヒドロシランとの反応を検討した。ケトンおよびアルデヒドについては、昨年度は分子間反応での反応を検討していたが、今年度は分子内にアセチル基およびホルミル基を含むフェニル酢酸アミドを合成し、ヒドロキロシロキサンとの反応を検討した。ニトロ基やシアノ基の反応に用いたイリジウム触媒を適応した場合、ケトンやアルデヒドまでヒドロシリル化が進行してしまった。そこで、触媒の種類や濃度といった反応条件を最適化することで、分子内にケトンを含むアミドについて、アセチル基存在下におけるアミド選択的な還元反応を達成した。アルデヒドについても、80%の化学選択性でアミドのみ還元することに成功した。 実際に合成した含ケトンまたは含アルデヒドエナミンについて蛍光スペクトルを測定したところ、極性溶媒中で発光特性を示すことが明らかとなった。また、同大学・國信洋一郎教授との共同研究によって、Lewis酸であるB(C6F5)3を作用させると、吸収および蛍光波長が大幅に長波長シフトすることを見出した。これらの成果は極めて新規性の高い現象であったため、国際特許の申請に至った。出願期間を経て、最終年度に学会および論文発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、昨年度までに合成していた含ニトロ/シアノ/エステルエナミンに加え、アミドのヒドロシラン還元において、より競争的に反応が進行し得るケトンやアルデヒドについても、反応条件の検討によって、カルボニル基を損なうことなく化学選択的なエナミン合成に成功している。当初想定していなかった成果として、反応条件の検討の過程において、Vaska型イリジウム錯体に代わり、[IrCl(COD)]2 と リン配位子の系内撹拌によって触媒活性種が代替できることが発見された。これによって、より簡便に反応条件をスクリーニングすることができるようになっただけではなく、既存の触媒系よりも低濃度での反応を達成できるようになった。本成果は主題であるD-A型π共役エナミンお合成の成果とは独立してOrganometallics誌にて発表し、その成果が高く評価され、Supplemental cover に選定された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果はPCT特許として国際出願を既に完了している。出願期間の都合上、補助し事業期間の延長を申請しており、最終年度に本成果を論文発表する予定である。また、昨年度から取り組んでいる D-A-D 型 / A-D-A 型オリゴエナミン分子の合成や、環状エナミン合成についても取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度は、エナミンの原料となるアミドについて、市販品ではなく別途合成が必要だったため、新規化合物についての同定を行うためにIR測定用の備品を購入した。PCT出願によって、成果発信を遅らせる必要があったが、次年度に向け論文及び学会発表を準備を行っており、旅費や論文の英文校正料を確保する必要がある。また並行して、昨年度から取り組んでいる D-A-D 型 / A-D-A 型オリゴエナミン分子の合成や、環状エナミン合成についても取り組むべく、消耗品の購入を予定している。以上の観点から、上記の次年度使用額を適正に執行する予定である。
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Research Products
(18 results)