2019 Fiscal Year Research-status Report
集団移転復興のデータベース化と移転実施者の復興感の解明
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17K17954
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安部 美和 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (40619805)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害復興 / 集団移転 / 復興政策 / 移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年(令和元年)度は、昭和47年から平成23年までの防災集団移転促進事業35事例について文献および行政データの収集を行い、データ整理を行った。また、防災集団移転促進事業成立以前の自然災害後の集団移転事例について、大正3年桜島大噴火後の朝鮮半島への移住について当時の行政の方針及び、移住者の子孫への聞き取り調査を実施した。 その結果、当時の鹿児島県では被災による移住希望者数を桜島及び大隅半島あわせて2500戸と見込んでいたが、実際には行政が準備した指定地移住者は1002戸(6245人)、それ以外への任意移住者は2066戸(14587人)にのぼった。移住先には鹿児島県内をはじめとする国有林地が払い下げられ、林野の開墾が条件となった移住が多かった。本研究が対象とした朝鮮半島への移住者は、10世帯53人である。彼らは、国内指定移住地への移住者よりわずかに多くの支援金を受け取り、汽車と船を乗り継いで韓国の現金提市へと集団移住を果たした。日本国内の移動で言えば、鹿児市から福島市に移住したのと同じほど気候の異なる地へ移動し、新しい生活を迎えたのである。住宅や生活様式を日韓融合させながら工夫し、一方で国内移住者に多くみられた「桜島」を思い起こさせる名称や印を用いることなく、子供たちには鹿児島または桜島の文化を積極的に伝えるとのない生活を送っていたことが分かった。 国内の移住に際しては、小屋掛け料、仮設小屋、移住に必要な実費や旅費、生活に必要な家具や農具の費用、荷物の運搬費、相当期間の食料費と油代、さしあたり必要な種苗および肥料、共同浴槽などが支給されていたことが分かり、現在のような、補助金による支援だけではなく、集落として機能するために必要な支援は何かが検討されていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年(令和元年)度は、当初予定していた防災集団移転35事例のデータ整理及び大正3年の桜島大噴火後の移転事例について調査を実施できた。過去の事例から、大正時代の災害後の集団移転事例における政策プロセスが明らかになったことにより、現在の移転事例との比較が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
整理した35事例のデータベース化を図るとともに、昭和47年以前の4事例についてその復興政策を整理し現代の集団移転のプロセスや政策と比較検討を行う。また、それぞれの地域の復興状況についての現地調査を実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大に伴い、1月以降に予定していた調査のキャンセルを余儀なくされたため、出張の見合わせを行っている。
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