2017 Fiscal Year Research-status Report
プロドラッグ/アンテドラッグ分子修飾体の徐放型関節内投与DDS製剤設計への応用
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17K17958
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大浦 華代子 熊本大学, 大学院先導機構, 特定事業教員 (80452879)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 変形性膝関節症 / 加水分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、変形性膝関節症の関節内投与製剤の開発を目指して、DDS製剤化に応用できる関節内の加水分解酵素の特性を明らかにすることを目的としている。これまでに、変形性膝関節症患者関節液には、血管から漏出したアルブミン(66kDa)やブチリルコリンエステラーゼ(BChE、340kDa)、HDL結合型パラオキソナーゼ1/アリルエステラーゼ(PON1、45kDa)の血漿加水分解酵素が存在することを明らかにしている。 H29年度は、PON1に焦点をあて、変形性膝関節症患者の関節液中のPON1活性を測定し、X線画像診断により分類される病態グレード(Kellgren- Lawrence分類)との関係を検討した。病態グレードⅡからⅢへの進行に伴い、PON1活性は増大する一方、グレードⅣへの重症化に伴ってPON1活性は低下することを明らかにした。関節液は治療目的で採取・廃棄されているが、PON1も含めた関節液中の加水分解酵素の活性の解析により、変形性膝関節症の診断や治療に利用できる可能性がある。また、H29年度は、滑膜細胞に発現する加水分解酵素の特性を評価するに当たり、加水分解酵素の中でも特に発現の多いセリンエステラーゼの発現量の定量法を、セリンエステラーゼプローブのFluorophosphonate(FP)にビオチンを標識したFP-biotinを用いて構築した。この評価系により、滑膜細胞に存在するセリンエステラーゼの特異的抗体を必要とせずに、ユニバーサルに組換えセリンエステラーゼの発現量定量が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度はヒト滑膜細胞に存在する加水分解酵素の同定、病態時における加水分解酵素の活性変動の評価、関節炎動物モデルの滑膜細胞と関節液における加水分解酵発現の評価を研究計画にしていた。ヒト滑膜細胞の加水分解酵素の同定については、セリンエステラーゼの発現量定量法を構築した後、着手し始めている。また、病態時における加水分解酵素の活性変動については、本研究を開始する前に、関節液内のブチリルコリンエステラーゼの活性測定は行っており、本研究で評価したPON1活性の測定結果を含めて、学術雑誌への投稿を検討している段階である。関節炎動物モデルの加水分解酵素の同定については、ウサギの関節液と培養滑膜細胞を用いて検討している段階であり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト滑膜細胞のセリンエステラーゼの同定については、現在、FP-biotinを応用して試みており、ヒト滑膜細胞にはFP-biotin化タンパク質が含まれていることまで明らかにしている。今後、LC-MS/MSによりタンパク質の同定を行う予定である。関節炎動物モデルの滑膜細胞にもヒト滑膜細胞と類似の酵素が発現しており、同様の方法を用いてタンパク質同定を行う予定である。血漿加水分解酵素の特性については、健常者の血漿を用いて基質認識性等について解析する。
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