2018 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患モデルを用いた新規腫瘍発生制御免疫システムの解明
Project/Area Number |
17K17964
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
近藤 智之 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10782873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腫瘍 / 化学発がん / 自己免疫 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫状態が腫瘍発生に関与する基礎的な免疫動態を明らかにするために、自己免疫疾患モデルマウスとしてB6/lprマウス(FAS遺伝子の突然変異マウスで、末梢で自己反応性のリンパ球にアポトーシスが生じず全身性エリテマトーデス様の症状を示す)を、コントロールとしてC57/BL6マウスを用い、以下に示す化学発がん実験を行なった。 腹腔内に発がん性物質であるMNU (N-methyl-N-nitrosourea)をくり返し投与するこ とで胸腺T細胞リンパ腫を発症するモデルを用いたが、B6/lprマウスでは元来自己反応性の異常リンパ球が認められるため、リンパ腫を自然発症するので解析モデルとしては適さない事が分かった。 発がん性物質であるAOM (Azoxymethane)の腹腔内への投与及び特異的腸炎誘発剤であるDSS (Dextran sodium sulfate )の自由飲水投与を行うことで大腸炎及び大腸腺癌を発症するモデルの化学発がん実験を行なった結果、コントロールマウスと自己免疫疾患モデルマウスのいずれも大腸に腺腫の発生を認めたが、自己免疫疾患モデルマウスにのみ明らかな浸潤増殖を示す腺癌の発生を組織学的に確認した。 また、末梢血についてフローサイトメトリーによる解析を行なった結果、自己免疫疾患モデルマウスではAOMとDSSの投与前に比較して投与後では腫瘍の免疫チェックポイント分子として重要であるCTLA4陽性B細胞の割合が亢進していた。これらの結果より、自己免疫状態では腫瘍発生により免疫チェックポイント分子の発現が増加し免疫反応が不活性化した結果、腫瘍増生の亢進が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己免疫状態における発がん能・腫瘍発生の亢進、腫瘍免疫と自己免疫との関係性、オーバーラップについてなんらかの違いや差があるという可能性が示唆されたことは、今後の発展的な研究に繋がると評価出来る一方で、さらなる具体的メカニズムや関連分子に関しての検索を進める必要があるため。
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Strategy for Future Research Activity |
AOMとDSS投与モデルでは、コントロールと自己免疫モデルを比較して発がん能・腫瘍発生に対する免疫応答の差がある可能性が示唆されたため、今後は解析に十分適したサイズまで腫瘍が増殖したのちに解剖を行い腫瘍組織中に浸潤する免疫細胞のポピュレーションなどの解析を行い、腫瘍発生亢進に重要な役割を担う免疫細胞を同定する必要がある。
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