2017 Fiscal Year Research-status Report
作物共生細菌情報を利用して獲得したBradyrhizobium属細菌の性状解析
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17K17966
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
鶴丸 博人 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (60545226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テンサイ / Beta vulgaris / 共生細菌 / Bradyrhizobium / Bradyrhizobiaceae |
Outline of Annual Research Achievements |
テンサイから分離した約100株のBradyrhizobium属細菌(テンサイ由来Bradyrhizobium属細菌ライブラリー)の16S rRNA遺伝子配列のほぼ全長を決定した。mothurソフトを用いてoperational taxonomic unit (OTU)解析を行った結果、これらは、14種類の OTUに分かれた。OTUの代表株の16S rRNA遺伝子配列を、blast解析した結果、Bradyrhizobium属以外のBradyrhizobiaceae科の株が多く含まれていた。Miseqを用いて解析された代表株のゲノム配列から、完全長の16S rRNA遺伝子配列を取出し、blast解析した結果、新種候補となる(データベースに対して98.7 %以下の相同性を持つ)Bradyrhizobium属細菌はなかった。一方で、average nucleotide identity(ANI)法を用いて解析した結果、新種候補となるBradyrhizobiaceae科の株が複数存在することが示された。 テンサイから分離したBradyrhizobium属細菌のゲノムデータベースに対して、既知の窒素固定遺伝子(nifH遺伝子)、ニトロアルカン代謝関連遺伝子(P3N遺伝子)、リン酸溶解関連遺伝子(gdh遺伝子)をそれぞれqueryとして、blast検索を行ったが、これらの遺伝子は検出されなかった。一方、一部のBradyrhizobium属細菌株で、メタノール利用遺伝子(MDH遺伝子)が検出された。以前の研究で、我々は、「作物生育促進に関連する可能性があるMDH遺伝子が、テンサイ共生細菌メタゲノム中で検出され、その多くがBradyrhizobium属細菌に多く割り当てられた」ことを報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の結果から、Bradyrhizobium属細菌の新種候補株が得られると予想していたが、16S rRNA遺伝子の全長解析結果から、テンサイ由来Bradyrhizobium属細菌ライブラリーには、新種候補となるBradyrhizobium属細菌は存在しなかった。一方で、このライブラリーには、Bradyrhizobium属細菌以外のBradyrhizobiaceae科の新種候補となる株が複数存在することが、ゲノム解析結果から示された。 ゲノム解析結果を元に、テンサイ由来Bradyrhizobium属細菌が持つ作物生育促進機能を推定し、接種資材として有望かを確かめた。来年度の接種実験による作物生育促進細菌の選抜に必要なテンサイ種子も本年度入手しており、今後も滞りなく実験を遂行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、テンサイ由来Bradyrhizobium属細菌ライブラリーの中から作物生育促進細菌を選抜する。テンサイから分離した約 100 株の Bradyrhizobium 属細菌(テンサイ由来 Bradyrhizobium 属細菌ライブラリー)から、作物生育促進細菌を選抜する。この時、ゲノム解析の結果、作物生育促進機能遺伝子を有していないと判断された菌株も調査対象とする。コンプリートゲノムではないため、また、アノテーションミスにより、機能性遺伝子を見落とす可能性があるからである。加えて、対応する遺伝子が見つからないのに生育促進の表現型を示す場合、新規な有用遺伝子を同定できる可能性がある。ゲノム解析対象株以外から、生育促進効果を示す株が出てきた場合は、それらの株のゲノム解析を検討する。本手法で選抜されたテンサイ生育促進細菌は、効率的な作物生産に貢献できる可能性が高い。
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Causes of Carryover |
ゲノム解析に使用する高額なソフトを計上していたが、現時点では、公共の解析サービスを使用して代用した。 来年度に行う接種実験や、接種実験後に行う追加のゲノム解析費用が高額となる可能性があるため、上記の分を、次年度使用額とした。
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