2017 Fiscal Year Research-status Report
Process and mechanisms of evolutionary loss of species recognition by calls in geckos
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17K17970
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
城野 哲平 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, JSPS特別研究員(PD) (70711951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コミュニケーションシグナル / 進化 / 種認識 / 配偶者選択 / 機能生態 / 爬虫類 / ヤモリ / 儀式化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中国と台湾で対象ヤモリ種の野外採集・分布調査を行い、未入手であった2種の系統解析用組織サンプルと3種の鳴き声形質を収集した。室内における行動実験下での録音により、オスのメスに対する求愛コールを得てその構造を定量化した。得られた鳴き声を解析し、パタンや周波数、持続時間などの音声要素を定量化した。その結果、他の同属種と分布を接するGekko auriverrucosusとG. guishanicusは規則的なパタンをもち種認識に有用であると考えられる鳴き声を示し、離島に隔離分布するGekko sp.はパタンのない鳴き声を示した。これは、地理的隔離を経て鳴き声による種認識システムが失われ、ランダム型の鳴き声が進化したという仮説を支持するものである。 さらに、パタンのない鳴き声が配偶者選択に用いられている可能性を検討するため、咬合力測定装置を組み上げ、パタンをもつ鳴き声のG. guishanicusとパタンのない鳴き声のGekko sp.を対象に、トカゲの武器形質である咬合力を測定し、オス個体の闘争における強さを定量化した。加えて、オスの体サイズや頭幅、肥満度などの形態形質を測定し、配偶者としての質を定量化した。さらに、求愛コールのパタン以外の構成要素(音量や継続時間、基本周波数など)と、咬合力や体サイズとを比較することによって、配偶者選択の指標となる求愛コールの音声要素の特定を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた5種のうち、中国の2種は採集できなかった。うち1種に関しては、タイプ産地に他の同属種が生息しており、記載論文の記述では前述の同属種と識別不能であることから、シノニムである可能性が高いと考えられる。さらに、サラワクで調査を実施する機会を得たため、対象種群と近縁の同属種1種の鳴き声を調査することによって、パタン型からランダム型が進化したことをより大きな系統的枠組みで示唆することができた。 中国と台湾でのサンプリングが順調に進んだため、台湾国立博物館の共同研究者の協力のもと、咬合力測定装置を組み、次年度以降に予定していた咬合力測定を一部実施できた。予備的に一部実施した実験のデータを用いて、体サイズを考慮した求愛コールの優占周波数と咬合力の相関を調べた結果、両者に強い相関があることが示唆された。予測に一致した結果が得られたため、現在追加のサンプリングを行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
残りの種のほとんどはラオスとベトナムに分布する種である。ラオスとは現地の共同研究者と連絡を取り合い、次年度に野外調査を実施するためLoAを締結するなどの準備を進めている。ベトナムの共同研究者とは、次年度に開催される国際シンポジウムで直接会い打ち合わせを行う予定である。 研究計画が予定より順調に進行しているため、系統関係によらず鳴き声のタイプと機能が相関して進化していることをより明確に示すため、現在行動実験を実施しているパタン型1種、ランダム型1種に加え、両タイプをもう1種づつ対象とする。
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