2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of Animal Studies in Literature and Cultural Studies
Project/Area Number |
17K17977
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
江口 真規 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 助教 (30779624)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アニマル・スタディーズ / 動物 / 比較文学 / 比較文化 / 文学論 / 表象 / 海外における日本文学・日本文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、関連書籍や論文、学会・研究会への参加を通して、国内外のアニマル・スタディーズに関する情報収集と考察を行った。比較文学会や村上春樹国際シンポジウム、文学・環境学会/ASLE-Japan等の文学領域の学会のほか、慶應義塾大学動物社会文化論研究会、ヒトと動物の関係学会、国際学会Minding Animals Conference 4(於メキシコ国立自治大学、以下MAC4と略記)に参加し、複数の領域を跨ぐ研究者のネットワークを構築した。2018年1月に開催されたMAC4では、日本におけるアニマル・スタディーズの発展の経緯と現状、問題点について口頭発表を行い、30カ国を超える国々の参加者と情報交換・議論を行った。また、MAC4の発表前には、ヒトと動物の関係学会メンバーによる発表練習会が開催され、日本国内で動物に関する研究を行っている様々な分野の研究者と討議する機会を得た。本研究では、将来的に研究協力者を募り、主要参考文献リストを含めたアニマル・スタディーズの入門書を日本語で刊行することを射程に据えていたが、上記の学会・研究会を通して交流した研究者とともに、共著での出版計画を進めるに至った。 また、日本でのアニマル・スタディーズの理論応用の一例として、2018年1月に単著『日本近現代文学における羊の表象――漱石から春樹まで』(彩流社)を刊行した。これは、2015年に提出した同テーマの博士論文に、上記研究活動の一部を反映させ改稿を行ったものである。ここでは、国内外のアニマル・スタディーズの動向や問題点についても概略を述べ、参考文献を示した。これにより、より広い読者層にアニマル・スタディーズの研究の枠組みと方法論を提示し、夏目漱石や大江健三郎、安部公房、村上春樹といった日本文学を代表する作家の作品を動物という観点から読み直すことで、新たな解釈を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は著書の執筆と刊行を重点的に行ったため、従来予定していた国内外のアニマル・スタディーズに関する情報収集とその整理にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)海外におけるアニマル・スタディーズに関する情報収集と考察 前年度に引き続き、英語文献を中心とする書籍や論文を精読し、主要参考文献リストの完成を目指す。これに関しては、ミシガン州立大学のアニマル・スタディーズ・プログラムがウェブ上で公開している文献リストを活用することで、効率的に情報収集が進められると考えられる。次に、アニマル・スタディーズ関連の教育研究機関の現状を把握するため、Animals and Society Instituteのウェブサイトや、MAC4のパネル発表「Animals and Higher Education」で得られた情報、発表者とのメールでの連絡を通して、アニマル・スタディーズの科目が開設されている機関の情報を整理する。 (2)日本国内におけるアニマル・スタディーズに関する情報収集と考察 前年度に引き続き関連学会や研究会に参加することにより、国内のアニマル・スタディーズの動向や、日本文学・文化を分析の対象とした研究成果を把握するための意見・情報交換を行う。合わせて、日本の動物観や動物の歴史に関する文献の収集と精読を行い、海外の動向と比較対照を行う。次に、アニマル・スタディーズの学習の機会が提供されている国内の教育研究機関の情報を収集し、そのカリキュラムや科目情報を整理する。これらの研究成果とMAC4での発表内容をもとに論文を執筆し、国際誌Society and Animalsへ投稿を行う。また、MAC4での研究者間の交流の継続として、平成30年度末に開催されるアジア研究もしくは動物に関する国際学会において、日本文学作品の動物の表象をテーマとした口頭発表を検討している。 (1)・(2)ともに、将来的にはアニマル・スタディーズ入門書の出版へと連繋していけるよう、データ整理と原稿の執筆を行う。
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