2018 Fiscal Year Research-status Report
ハエ雄外部生殖器構造の多様化過程で起きた発生遺伝子ネットワークの変化
Project/Area Number |
17K17985
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 健太郎 首都大学東京, 理学研究科, 特任研究員 (30774129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 外部生殖器 / 形態進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化の過程において新しい機能を担うユニークな形態構造が出現し,その後に種固有の進化を遂げることは珍しく無い。例えばキイロショウジョウバエ種亜群の共通祖先で出現した外部生殖器後葉は交尾の際に雌の腹部を固定するために使われる,新たな機能を持った雄固有の構造であり,種間でその形態は如実に異なる。新たに獲得された形態構造が種固有の形態へ進化する際,発生遺伝子ネットワーク上に起こる変化は,“新しい遺伝子が組み込まれることで起こる変化”と“既にネットワークを形成している遺伝子が改変されて起こる変化”の2通りが考えられる。後者を進化発生学的視点から分類すると,“構造の出現の際に組み込まれた遺伝子”と“構造の出現以前からネットワークを形成していた遺伝子”に更に大別できる。本研究では、キイロショウジョウバエ種亜群における外部生殖器後葉の形態進化をモデルに,構造の多様化の段階でみられる発生遺伝子ネットワーク上の変化の解明を目指している。このために,外部生殖器の多様化に関わる遺伝子の同定を推めており、RNA-seq発言解析から候補遺伝子の探索を行った。D. melanogaster, D. simulans, D. mauritiana, D. sechellihaの4種を用いた遺伝子発現比較から、それぞれ、496遺伝子(D. melanogaster)、269遺伝子(D. simulans)、303遺伝子(D. mauritiana)、462遺伝子(D. sechelliha)が種独自の発現変動を起こしていることが分かった。また、cuticle developmentに関わる遺伝子が多く含まれていた。今後はこれら候補遺伝子の機能解析を行うことで遺伝子同定を進め、さらには種間比較・発生ステージや組織間の比較から発生遺伝子ネットワーク上に起こった変化を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、D. melanogaster, D. simulans, D. mauritiana, D. sechellihaの4種についてそれぞれ異なる2つの発生ステージのRNA-seqを完了し、それぞれの種でユニークな発現を示す遺伝子を絞り込むことができている。更には、D. mauritianaとD. simulansの雑種オスについても同様にRNA-seqを行ったことで、アレル特異的な発現変動から、この2種間のcis領域の違いによる発現変動遺伝子の絞り込みも進行中である。しかしながら、本年度中に着手を目指していた機能解析まで踏み込むことが出来なかったため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPRによるゲノム編集を行うことで、遺伝子の同定を行う。同定が完了次第、近縁種や異なる発生ステージとの比較から、発生遺伝子ネットワーク上に起こった変化を推定する。
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Causes of Carryover |
国際学会へ参加を予定していたが、国内開催の国際学会へ参加したため、本年度の旅費が軽減した。次年度はインドで行われる国際学会への参加を予定しており、その旅費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)