2018 Fiscal Year Research-status Report
制度とコミュニティからみた外国人との交流と地域参加に関する調査
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17K17987
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大槻 茂実 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20589022)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多文化共生 / 共助型社会 / ソーシャル・キャピタル / 接触仮説 / 社会階層 / 地域参加 / 社会的凝集性 / トライアンギュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,地域住民らによって進められる多文化共生施策・地域参加の試みと,自治体によって進められる多文化共生施策・地域参加施策の乖離と接合の可能性を検討することである.特に本研究では、聞き取り調査や参与観察と自治体を対象とした質問紙調査を併用することで、分析知見の深化を行っていく。 2018年度は,インプットとアウトプットそれぞれを当初の計画通りすすめた.インプットとしては,質的アプローチにもとづく社会調査の実施である.具体的には,2017年度に行った先行研究(主に多文化共生および郊外社会を中心とした地域社会における住民の地域参加に関する実証研究)の整理と分析枠組みの精緻化を土台として,自治体職員に対する聞き取り調査を行った.このプロセスを通して,自治体側が想定する多文化共生施策の障害と地域参加促進施策との連動可能性を導出を行った. アウトプットとしては,積極的に現時点での研究内容を国際的な学会・研究会で発表した.具体的には,2018年7月にトロントで開催された国際社会学会(XIX ISA World Congress of Sociology)において,学術報告を行った.また,主な国際的な研究会での学術発表としては,首都大学東京都市教養学部都市政策科学科とソウル市立大学校の合同セミナーにおける研究発表が挙げられる.いずれの研究発表も,本研究での知見と本研究の前身である科研費研究(研究課題 25870593, 若手研究(B), 研究代表 者=大槻茂実)の研究内容の総合的なアウトプットとなっている.いずれのアウトプットについても,今後の研究内容を発展させる上で,国際的な見地からの生産的なコメントを得ることに成功した.2019年度は2018年度の調査内容を踏まえて,引き続き自治体職員および地域住民に対する質的調査を行うと共に,自治体を対象とした質問紙調査を実施していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のこれまでの取り組みは以下のように整理される.2017年度に先行研究の知見整理を行い,分析脇組みの精緻化を行った.2018年度は前年度に得られた研究成果を土台として,自治体職員に対する聞き取り調査を実施した.特に現在に至るまで,精力的に国際学会,研究会において研究状況を報告をしており,その都度,有識者からのコメントのもと,調査計画をはじめとした研究内容の改善に成功している. 2018年度は公益財団法人東京市町村自治調査会東京自治調査会調査部職員・研究員に対する聞き取り調査を行った.調査の目的は自治体側が把握する多文化共生施策の課題点と改善点を導出することにあった.調査対象とした東京市町村自治調査会は2017年度および2018年度都内の多摩地域を中心とした基礎自治体に対して多文化共生にかかわる施策に関する調査を実施している.したがって,このような経験を中心とした聞き取り調査および資料収集を行うことで,上述の調査目的に適した情報収集が可能であると判断した.事実,調査自体は想定通りに実施され,必要な情報を得ることができたと判断される.また,2018年度に東京市町村自治調査会が基礎自治体に対して行った質問紙調査については,本研究代表者が調査データのクリーニング作業および基礎的な統計データの算出について積極的にサポートを行った.それと同時に,東京市町村自治調査会側が企画した聞き取り調査に協力する形で,聞き取り調査対象者として本研究代表者が調査に協力を行った.このようなやりとりは,本研究の研究計画に組み込まれていた内容ではなかったが,結果として,本研究の研究目的を追究していく上でポジティブな「誤算」となった. 以上の経過を踏まえ,本研究の現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,実査を継続していく.特に2019年度は自治体を対象とした量的調査を敢行し,これまでの質的調査で得られた知見の一般化を検討する.特に2018年度に行った東京市町村自治調査会に対する調査で,自治体にとって望ましい調査時期や調査票の郵送先情報など,自治体に対して郵送形式の質問紙調査を行うにあたっての有益な情報を得ることができた.それと同時に,国際社会学会(XIX ISA World Congress of Sociology)で行った学術報告での有識者との議論を通して,分析枠組みの改善を行うことができた.このような情報収集と分析枠組みの改善から,2019年度における研究の実現性は本研究の申請時点での想定以上に高まったと判断される.また,2019年度は本研究の最終年度でもあることから,これまでの研究知見の統合を行い,最終的なアウトプットを行う予定である. 2019年度4月1日付で研究代表者の所属機関が変更になった.このことから,2019年度に実施予定の質問紙調査の準備などについて,計画からの若干の修正が生じる可能性が想定される.具体的には,調査票の印刷方法,実査時点での連絡先,回収調査票の保管先などの確保・変更である.しかしながら,所属機関の変更に起因するこうした計画の変更は,現在のところ大規模な内容ではないと判断される.研究計画が滞りなく進むことに引き続き注力していく.
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Causes of Carryover |
研究課題をすすめて行く上で,国際学会・研究会での継続的な分析枠組みおよび調査計画の検討を通して,物品費などの経費を削減することが可能となった.また,調査対象地域の修整を行ったたため,国内の旅費を削減することが可能となった.最終年度は,質問紙調査を実施する計画であり,そのための費用を計上する必要がある.具体的には,以下の内容である.調査票の作成,印刷,発送用の封筒の購入,封筒に研究代表者所属先情報を記載するための印刷費用,調査票記入用のボールペンの購入,ボールペンへの代表者情報の印刷費用,調査対象者への挨拶状としてのはがきの購入および印刷費用,回収率を高めるための督促状用のはがき購入および印刷費用,調査票の発送費用および返送費用,データ入力・クリーニング・分析作業にともなうPCとアプリケーションの購入などである.
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