2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞極性を制御する新規リン酸化シグナル伝達系の同定
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17K17991
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 和成 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70589481)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞極性 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
PAR-aPKC細胞極性制御因子群は、非対称な形態を形成する細胞(上皮細胞、神経細胞、非対称分裂を行う幹細胞など)において、非対称な細胞膜ドメインを形成するために必要な因子であり、動物種間や組織種間にわたって普遍的に保存された因子群である。PAR3はその因子一つで、上皮細胞では細胞間接着部位に局在して機能する。本研究では、新規に同定したPAR3のリン酸化修飾とその脱リン酸化機構に着目し、これによるPAR3の局在制御機構を明らかにする。 今年度は、このリン酸化部位の非リン酸化模倣体(SA変異体)のFRAP解析を行った。FRAPは蛍光タンパクを融合したタンパクを強力な光で退色させてその後の蛍光輝度の回復を観察することで、着目しているタンパクのターンオーバー(分子の入れ替わり)を調べる方法である。細胞間接着部位に局在した野生型PAR3-GFPとPAR3_SA-GFPのターンオーバーを比較すると、SA変異体の方が遅いことがわかった。この結果から、非リン酸化型PAR3は細胞間接着に安定局在していることが示唆された。 また、このリン酸化の生理的意義を明らかにするために、内在性PAR3をPAR3_SAで置換した上皮細胞が細胞間接着を正常に構築できるかどうかを評価した。培養上皮細胞よりカルシウムを減少させて細胞間接着を破壊し、再びカルシウムを添加することで細胞間接着形成能を評価した。その結果、PAR3_SAで発現を置換した細胞では、細胞間接着形成に遅れを生ずることがわかった。PAR3_SAは分子の入れ替わりが遅いために、迅速に形成される細胞間接着部位へのリクルートが阻害されていたことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に実行する予定であった、「新規リン酸化部位のSA変異体を用いたFRAP解析」また、「PAR3_SAで内在性PAR3を置換した上皮細胞における細胞間接着形成能の評価」の2つに関しては予定通り完了し、そして、仮説に合致した結果を得ることができたため、進展は順調であると言える。また、PAR3の脱リン酸化機構についても解析を進めており、脱リン酸化に関わる因子が明らかになった。ただし、本年度内に取り掛かる予定であった「上流キナーゼのsiRNAスクリーニング」に関してはこれから行う予定であり、すべてが計画通り進んでいるわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の結果より、PAR3の新規リン酸化は、細胞間結合部位における分子の入れ替わりを制御しており、それによってその局在を制御することを示すことができそうである。しかし、リン酸化によってこの分子の性質の何が変わっているのかは依然として不明なままであるので、次年度の課題としたい。PAR3の分子間会合を制御している可能性を示唆する結果が得られているので、これを検証していく。また、この新規リン酸化部位をリン酸化するキナーゼが不明なままであるので、siRNAライブラリを用いた、上流キナーゼの同定を行う予定である。この部位のリン酸化を認識する抗体は作成済みであるので、この抗体によるウエスタンブロットを評価系として順次進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
PAR3の新規リン酸化部位をリン酸化するキナーゼが不明であるので、siRNAライブラリを用いた、上流キナーゼの同定を行う予定であったが、所属の変更等のため、この作業に関しては実行できていない状況である。このため、遺伝子導入試薬などの購入が完了せず、次年度に持ち越すこととなった。
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Research Products
(1 results)