2018 Fiscal Year Research-status Report
スマートフォンアプリを用いた歩行中の注意機能評価による効果的な転倒予防戦略
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17K17995
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
鈴木 智高 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (00576382)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 注意 / 歩行 / 反応時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
実行する認知課題や運動課題の難易度が増加することに伴い課題の注意負荷も増加する。ヒトの注意容量には限りがあるため、課題が複数になった場合には、適切に注意を分配する必要がある。加齢に伴う注意容量の減少や分配といった注意機能の低下は、転倒リスクを増加させる因子となり得ることが報告されている。課題中の注意負荷量は、反応時間課題を用いた二重課題法で評価することが可能である。 我々は世界的に広く普及しているスマートフォンを使用して、上記の評価が簡便に行えるAndroid版アプリケーションを開発し、課題実行中、特に歩行中の注意機能の変化を評価している。前年度はこのスマートフォンアプリケーションを用いて、杖の使用が歩行中の注意需要に及ぼす影響について研究を実施した。注意需要の変化は仮説をしていた結果に近いものであったが、さらに、杖の使用や歩行不安定性に伴う注意需要の変化は、同時に測定された歩行速度の変化と非常に一致するという結果を得た。すなわち、両者の評価結果は強く関連していることが明らかとなった。 そこで、本年度はこれらの関係性をより明らかにするため、運動課題の難易度変化に伴う注意需要と歩行速度の変化について研究を実施した。歩行条件のわずかな難易度増加に対して、注意需要は鋭敏な変化を示した。一方、注意需要に比べて歩行速度はわずかな難易度増加に対する変化は示されなかった。歩行課題が高度に自動化されている運動課題であることが、この要因として考えられた。本研究では運動課題を操作したが、続いて認知課題を操作する研究を開始している。これらの研究データを集積し、注意需要と歩行速度変化の関連性を明らかにすることで、効果的な転倒予防戦略に示唆を与える知見が得られるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したスマートフォンアプリケーションは、自由な歩行環境下において簡便に注意需要を評価することができ、新規性が高い方法である。本方法で評価された歩行中の注意需要変化は、歩行速度と密接に関連していることが示唆され、これは先行研究からも支持される結果であった。歩行速度の評価は非常に簡便であり臨床的に広く用いられている、また、転倒リスクとの関連性も示されている著名な評価法である。そのため、転倒を引き起こす運動課題である歩行とその速度が、注意需要とどのような関連性を有するのか詳細に検討する必要性が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
歩行中の注意需要評価を行い、ヒトの歩行とその速度に影響を及ぼす要因ならびに注意機能との関連性を明らかにしていく。次年度は、運動課題である歩行に付加する認知課題の難易度変化に対して、注意需要と歩行速度変化の関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
進捗の遅れに伴い次年度使用が生じている、また、実施している研究方法においては開発したスマートフォンアプリケーションを更新することなく遂行可能であり、既存の設備、実験環境を多く利用することができている。研究計画の進捗により、論文作成および公開に生じる費用、アプリケーション開発環境の整備費用、実験に要する物品費用等として、次年度使用する予定である。
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