2019 Fiscal Year Research-status Report
重イオンビーム変異とゲノム編集技術を用いたミネラル栄養価の高いコシヒカリの作出
Project/Area Number |
17K17998
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
増田 寛志 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40605268)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄 / 亜鉛 / イネ / 栄養強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄や亜鉛栄養価が高いコシヒカリを作出し、日本人が日々摂取する米食から鉄や亜鉛をより多く摂取できれば、日本人の鉄欠乏性貧血症や亜鉛欠乏症の改善に貢献できる。また、これによりコメの商品価値を高めれば、農家にとっても利益となる。そこで、重イオンビームにより変異を導入したコシヒカリの変異系統を種子中の微量元素の含有量と収量、表現型を元に選抜し、鉄や亜鉛含有量が高く、他の形質が通常のコシヒカリと同等の新しいコシヒカリ品種を作出すること、ゲノム編集によりさらに鉄・亜鉛栄養価を増加させることを目的としている。平成28年度の圃場栽培の結果、選抜系統の玄米の鉄含有量は野生株と比較して最大で1.4倍に、玄米の亜鉛含有量は野生株と比較して最大で1.7倍に増加していた。平成29年度には、選抜したM6植物体個体の圃場試験栽培を行った。表現型、収量、捻率を調査し、3系を統選抜した。また、鉄や亜鉛栄養価の高い3系統の変異株とコシヒカリの野生型と戻し交配を行い、平成30年の春にF2種子を得た。F2植物を圃場栽培し、WT10系統を含む454個体の収量を測定し、玄米の鉄、亜鉛含有量を測定した。さらに、鉄・亜鉛含有量の高いM6植物体の1系統よりゲノムを抽出し、次世代シーケンサーにより全ゲノムを解析した。野生株に比べて鉄栄養に関連する遺伝子の一つを含む領域が欠損していることが分かった。令和元年には、選抜したコシヒカリ変異株のM7植物体を秋田県立大学附属圃場で栽培し、次世代の種子を収穫した。また、秋田県農業試験場と共同研究を行い、鉄分や亜鉛の多いコシヒカリ変異株と秋田県内のイネ品種との交配を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ゲノム編集のためのベクターの作製をまだ終えていない。また、コシヒカリ変異株の原因遺伝子の確定には至っていない。研究が遅れてしまっている原因は次の通りである。1) 平成29年度の前半までは本科研費の研究課題とは別に、石川県立大学においてJSTのプロジェクト研究員としての研究課題に専念する必要があった。2) 平成29年度後半からは秋田県立大学の助教のポジションを得たが、本学の植物栄養研究室では分子生物学的実験を実施する設備がそろっておらず、本研究課題を遂行するための研究環境を整え、新たに実験系を立ち上げるのに時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)コシヒカリの野生型と戻し交配を行った系統の金属含有量結果をもとに、QTL-Seq法により、原因遺伝子を決定する。 2)ゲノム編集用のベクターを完成させ、選抜系統に導入し、より鉄・亜鉛栄養価の高いイネの作出を目指す。 3)引き続き秋田県農業試験場と共同研究を進め、秋田県のオリジナルのイネ品種と交配し、新たな品種を作出する。
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Causes of Carryover |
"7.現在までの進捗状況"で示しているように、本研究課題の実施は当初の計画より遅れている。また、それに伴い予算も余っているため、本来なら令和元年で終了する予定であったが、本研究課題の実施期間をもう一年延長することにした。令和2年度は新たな助成金の請求は無いが、この次年度使用額の繰り越し金を用いて、"8.今後の研究の推進方策"に記載した研究を進める予定である。
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