2017 Fiscal Year Research-status Report
環境中の細菌捕食性原生生物群集の増殖特性定量法の開発と実証
Project/Area Number |
17K18000
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
片岡 剛文 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (10533482)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水圏生態系 / 原生生物 / 原核生物 / 摂餌量 / 無菌培養 / 単離培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
水圏生態系の微生物ループにおいて細菌捕食性原生生物が原核生物を摂餌することで輸送される有機物量を見積もるための新しい手法開発と現場環境での実証が本研究の目的である。現場環境に即した見積もりを導出するためには、環境中に生息する微生物を用いて、水温や餌試料濃度などの環境要因を制御した再現性の高い室内培養実験を実施することが重要である。まずH29年度は、実験室内培養実験に使用する原生生物と原核生物を環境中から単離し、培養株を確立するための実験を実施した。海水湖(福井県日向湖)の表層水から、キャピラリー法を用いて3種類の異なる原生生物単離株(アメーバ様細胞1株, 鞭毛虫様細胞2株)と希釈培養法と画線法を組み合わせて2株の原核生物単離株(Pseudomonas sp., Vibrio sp.)の確立に成功した。単離培養された鞭毛虫様原生生物の内1株は、18S rRNA遺伝子配列を決定し、分子系統を調べたところ、Bicosoecida目に属したものの既存の単離培養株とは類似せず、新規系統であることが示唆された。本培養株の増殖速度を調べたところ4.8±1.1 cells/dayであり、培養実験を行うのに十分な増殖速度であることが判明した。原核生物に特異的な抗生物質を異なる濃度で添加して培養することで、原生生物単離株の無菌化を試みたがいずれの単離株においても原核生物を取り除くことはできなかった。また、当初予定していた三陸沖海域での実施は、複数年連続して春季ブルーム期の調査航海(A-line航海)に参加することが困難となったため、もう一つの調査実施予定地であった日向湖に変更することとなった。そのため、現場海水中の細菌捕食性原生生物の網羅的な群集構造解析はH30年度に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では①餌となる細菌の単離培養、②細菌捕食性原生生物の網羅的な群集解析、③細菌捕食性原生生物の集積と単離培養を予定し、生物生産が高い三陸沖海域と養殖場を有する海水湖(福井県日向湖)において実験する計画であった。しかし、2017年度は東北区水産研究センター(独立研究開発教育法人総合水産研究センター)が実施する、三陸沖の観測定線モニタリング航海(Aライン航海)に乗船することができなかったため、海水試料の提供を受けて上記実験の①と③のみを実施したが、単離培養株の確率には至らなかった。その後、調査地を日向湖に絞って研究を実施したが上記②の実験を実施することができなかった。一方で、当初H30年度に予定していた「生物生産の高い自然環境由来の細菌捕食性原生生物の単離培養」をほぼ終えているため、進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度に実施できなかった項目である「細菌捕食性原生生物の網羅的な群集解析」を日向湖において実施する。一方、当初H30年度に予定していた「生物生産の高い自然環境由来の細菌捕食性原生生物の単離培養」を終えているため、得られた複数種の細菌捕食性原生生物単離株を用いて、餌となる細菌と摂餌者である原生生物の増殖生理試験と原生生物の細菌捕食活性の計測を生理学的試験を実施する。
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Causes of Carryover |
三陸沖海域での調査を行わなかったために、予定していた人件費・謝金並びに調査物資の輸送費を支出しなかったために次年度使用額が生じた。当該助成金は単離培養した原生生物および原核生物の維持管理のための人件費並びに日向湖での調査のために次年度にしようする計画である。
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