2020 Fiscal Year Research-status Report
環境中の細菌捕食性原生生物群集の増殖特性定量法の開発と実証
Project/Area Number |
17K18000
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
片岡 剛文 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (10533482)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水圏生態系 / 原生生物 / 原核生物 / 摂餌量 / 無菌培養 / 単離株 |
Outline of Annual Research Achievements |
水圏生態系の微生物ループにおいて細菌捕食性原生生物が原核生物を摂餌することで輸送される有機物量を見積もるために、新規の手法を開発し、現場環境で実証することが本研究の目的である。現場環境に即した見積もりを導出するためには原生生物と餌となる細菌の二者培養による実験系を構築し、餌となる細菌から原生生物へ輸送される炭素量を計測する必要がある。2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する大学業務のため、科研費に関する研究エフォートが低下したため研究の進展は限りなく少ない。これまでに、海水湖から単離培養した3種類の細菌捕食性原生生物(Bicosoecida科, Vannella属, Neobodo属)のいずれの株も粒子直径が0.5-1.0マイクロメートルのポリスチレンビーズをよく捕食した。さらに、これら3株と若狭湾から単離した餌細菌株との二者培養の構築を試みた。まず、3種類のうちVannella属のみが抗生物質を添加した後も増殖し、餌となる細菌株10株では全ての株で抗生物質添加後3時間以内に増殖が阻害されたことから、餌となる細菌を3時間程度毎に与える必要があることがわかった。これらの結果を踏まえて、セルソーターを用いてVannella属のみを分取し、二者培養を作成したところ、30日間の培養後、5株の細菌株で増殖が確認できた。つまり、抗生物質耐性をもつ原生生物と細菌の二者培養を作成可能な手法が確立できた。一方で、抗生物質耐性を持たないBicosoecida属の原生生物は抗生物質を用いた二者培養は不可能である。さらに集合体を形成するためセルソーターによる単離も困難であるが、密度勾配遠心分離法を用いることで、培養液中の餌細菌を分離することに成功した。つまり、Bicosoecida属の単離株の餌細菌との二者培養系も確立しつつあり、実験材料は揃いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、まず、環境中から細菌捕食性原生生物と餌となる細菌単離株を単離培養し、実験条件下でそれら増殖生理を明らかにする計画であった。その後、餌となる細菌に核酸前駆体であるBrdUを添加してその取り込み量を明らかにすることでBrdU標識細菌株を作成し、それを餌として原生生物に摂餌させて細胞内に蓄積したBrdU量を計測する事で細菌から原生生物への炭素輸送量を見積もる計画であった。しかし、細菌捕食性原生生物の培養液に混在する雑多な細菌群集と単離した原生生物を分離することが困難であり、両者の二者培養を確立するのに時間を要した。抗生物質の添加量や濃度を繰り返し、複数の原生生物単離株の中からようやく1種類の抗生物質耐性を持つ原生生物を選出することができた。本株を含めて増殖活性の計測に必要な実験材料(二者培養系)は少数ながらも揃いつつある。一方で、初年度に予定していた「生物生産の高い自然環境における細菌捕食性原生生物の網羅的解析」を若狭湾で実施し環境中の原生生物に関するデータは分析中であり、一部は結果をまとめ始めている。同一海域の天然海水にBrdUを添加して環境温度で培養した試料を保存しているので、これらを分析・比較することで自然環境中でBrdUを取り込む原生生物を特定することができる。また、新型コロナウイルスの感染拡大により研究に対するエフォートが著しく減少したため、当初の計画と比較してやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、まず、環境中から細菌捕食性原生生物と餌となる細菌単離株を単離培養し、実験条件下でそれら増殖生理を明らかにする計画であった。その後、餌となる細菌に核酸前駆体であるBrdUを添加してその取り込み量を明らかにすることでBrdU標識細菌株を作成し、それを餌として原生生物に摂餌させて細胞内に蓄積したBrdU量を計測する事で細菌から原生生物への炭素輸送量を見積もる計画であった。しかし、細菌捕食性原生生物の培養液に混在する雑多な細菌群集と単離した原生生物を分離することが困難であり、両者の二者培養を確立するのに時間を要した。抗生物質の添加量や濃度を繰り返し、複数の原生生物単離株の中からようやく1種類の抗生物質耐性を持つ原生生物を選出することができた。本株を含めて増殖活性の計測に必要な実験材料(二者培養系)は少数ながらも揃いつつある。一方で、初年度に予定していた「生物生産の高い自然環境における細菌捕食性原生生物の網羅的解析」を若狭湾で実施し環境中の原生生物に関するデータは分析中であり、一部は結果をまとめ始めている。同一海域の天然海水にBrdUを添加して環境温度で培養した試料を保存しているので、これらを分析・比較することで自然環境中でBrdUを取り込む原生生物を特定することができる。また、新型コロナウイルスの感染拡大により研究に対するエフォートが著しく減少したため、当初の計画と比較してやや遅れていると評価した。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大防止のための大学業務のため、当研究に対するエフォートが著しく減少し実験が滞ったため消耗品費の支出が減った。また、英語論文校閲料ならびに投稿料を使用しなかったので、次年度使用額が生じた。当該助成金は単離培養した原生生物および原核生物の生理生態実験のために次年度に使用する計画である。
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