2019 Fiscal Year Research-status Report
前駆タンパク質転換酵素に着目した未熟児慢性肺疾患の病因解析と治療法の開発
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17K18005
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
加藤 晋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90551250)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 慢性肺疾患 / 早産児 / 肺胞形成 / 前駆体蛋白変換酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も高濃度酸素暴露による慢性肺疾患モデルマウスにおける前駆体蛋白変換酵素の発現変化の解析を進めた。 まず、光学顕微鏡を用いて①前駆体蛋白変換酵素が発現する、肺を構成する細胞の同定②Ki67染色を併用した、細胞増殖に前駆体蛋白が果たす役割の解析を進めた。結果、前駆体蛋白変換酵素は筋線維芽細胞での発現が有意である所見を確認した。これまでに肺胞を構成する筋線維芽細胞での発現は報告されておらず、新たな知見である。一方でマウスP4前後まではKi67陽性細胞が2型肺胞上皮細胞を中心に多く発現していることを、蛍光免疫染色法を用いて確認した。これらの結果は、前駆体蛋白変換酵素が間接的に2型肺胞上皮細胞の増殖、ひいては肺胞分化と関わっている可能性を示唆するものである。 次に、前駆体蛋白変換酵素の阻害剤を利用した、肺胞形成への影響解析に着手した。新生仔マウスに2日おきに阻害剤を腹腔内投与してP10で安楽死させ固定、肺胞構築の評価を定量的に行った。新生仔マウスへの処置は母マウスの喰殺や育児放棄を招きやすく、十分な成果を得るのに時間を要した。ようやく系が安定化してきており、先日の定量的評価で肺胞形成の遅延を確認したところである。今後は再現性の確認を進める予定である。 ここまでに得られた知見は、多因子が関わるとされる慢性肺疾患発症の詳細なメカニズムの解明へつながるものである。さらに新たな治療手段や薬物療法の開発をもたらしうる。患児や家族のQOLの向上だけでなく、医療的・経済的・社会的資源の節約にもつながるなど波及効果が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は高濃度酸素暴露によるマウスモデルを用いた系で前駆体蛋白変換酵素が受ける変化を確認することを中心に実験を進めた。前駆体蛋白や肺を構成する細胞の特異的抗体を用いた免疫組織化学法で、前駆体蛋白の局在の評価を進め、その存在様式を明らかにしつつある。また、前駆体蛋白変換酵素の阻害剤を新生仔マウスに投与することで、慢性肺疾患の病態を再現できないか検討を始めており、一定の成果を得つつある。 3次元肺培養モデルでは安定した結果を十分に得ることができておらず、高濃度酸素暴露モデルでの評価を優先しつつ、検討を継続している。肺の初代培養細胞を用いた検討は、vivoで一定の成果を確認したうえで、詳細を検討する段階で利用する予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は慢性肺疾患モデルマウスを用いて、前駆体タンパク変換酵素の阻害薬を用いた慢性肺疾患の再現、引き続き前駆体蛋白変換酵素の発現を促進する薬剤を投与することで、肺胞形成の改善を確認する。形態学的、遺伝子レベル、蛋白レベルで総合的に評価していく予定である。三次元肺培養モデルでは、炎症性サイトカインを用いた肺胞形成への影響を検討する。最終年度となるので、前駆体蛋白変換酵素が肺胞形成へ与える影響について、引き続き動物モデルを用いて明らかになりつつある現象のしくみを、分子生物学的手法を用いて詳細を確認したい。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行に十分なエフォートを割くことができなかったため。来年度も引き続き計画に沿って実験に取り組む予定です。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 極低出生体重児の入院時体温が発達予後を左右する2019
Author(s)
加藤 晋, 岩田欧介, 山田崇春, 水谷優子, 田中太平, 中村泰久, 津田兼之介, 戸川貴夫, 加藤丈典, 岩田幸子, 齋藤伸治
Organizer
第64回日本新生児成育医学会